セメント樽の中の手紙

歯医者と定期的な検査と治療。2万円が飛ぶ。不健康は金がかかる。
国立「みちくさ」で、角川文庫、葉山嘉樹『セメント樽の中の手紙』を見つける。へえ、こんなの、出てたんだ。平成20年だから、おそらく小林多喜二蟹工船』ブームに乗っかっての刊行だろう。作家としての力量は葉山嘉樹の方が高いと思うが、この角川文庫が話題になった記憶がない。新刊書店では、なかなか角川文庫の棚をチェックすることはないから、古本屋ならではの発見だ。表題作は教科書採択の定番で、タイトルは浸透している。「私の恋人はセメントになりました」の一行の強烈は、ちょっと比類がない。8篇の短編に、浦西和彦の人と作品、紅野謙介による解説、詳細な年譜と講談社文芸文庫なみ。カバーのデザイン処理もいい。

NHK「ステラ」から、今年の三冊を急きょ頼まれる。今年は、「本」の本が充実した年という印象。とりあえず、この三冊がすぐ浮かんだ。
司修『本の魔法』白水社
クラフト・エヴィング商會『おかしな本棚』朝日新聞出版
石橋毅史『「本屋」は死なない』新潮社