屋根の上の幸福、というものがあるんですねえ。

いま、うまくいっている、誰もがうらやむ古本屋の筆頭として「音羽館」の名が挙がる。広瀬くんと話しているとき、そのプレッシャーは大変だろうと言ったら、「いや、もう、大変ですよ」と。その広瀬くんからもらったコピー。「ステレオサウンド」の許光俊さんの連載「音楽の誘拐」20と21。許は慶應高校時代、ザ・タイガースを脱退した瞳みのる(人見豊)に漢文を習っている。「独特の暗さと、きつい近寄りがたい雰囲気を漂わせていた。孤独の影をまとっていた」という。ほかの先生にはない、暗みの魅力を持った大人として、許は少なからず影響を受ける。
しかし、今年、長年の疎通を解消し、ザ・タイガースのメンバーと再会し、回想『ロング・グッドバイのあとで』を書いた瞳みのるに、「著者が、私が知る彼とはもはや決定的に違ってしまっていることに失望を抑えられなくなった」。自分の知っている「人見先生は、きっと私が知らないうちに死んだのだ」とも書く。
ぼくは、その本を読んでいないので、なんとも言えないが、それは瞳みのるに対して、ちょっと酷だと思った。ぼくなど、若い頃の言説をたてに、いまの言動を批判されたら、ほとんどひとたまりもない。