藤田三男『榛地和装本 終篇』ウェッジを必要あって読み返していて、気付いたのは、70〜80年代に河出の編集者で、歌詠みだった人が多いこと。もちろん高野公彦(本名は日賀志庫彦)がいる。来嶋靖生は歌集「月」の歌人小野茂樹は角川から河出へ、歌集「羊雲離散」を残して早逝する。藤田三男も早稲田高等学院時代、短歌会に所属。来嶋は先輩だった。そういえば、河出は三木卓清水哲男平出隆、高橋順子など、高名な詩人も籍を置いていた。ちょっと、おもろいと思うんですね。
五木寛之関連のもの、あれこれ読む。懐かしい『青春の門 自立篇』も、五木の青春時代のこと、調べてると、実体験がかなり『青春の門』に生かされていることがわかる。
夜、NHKで、浅野忠信の祖父祖母をめぐる、数奇な運命を追ったドキュメントを見て、号泣する。早くに父親を喪ったぼくは、こういうのに弱い。
レンタルDVDで清水宏「簪」を見る。可部温泉を舞台にした、井伏鱒二原作のユーモアもの。笠智衆が温泉で簪を踏み、足を痛めるところから、簪の持ち主である田中絹代が詫びに訪ねてきて滞在する。温泉宿の三つの部屋がシャッフルされて、意外な展開に。笠智衆が痛めた足をリハビリするため、二人の子ども(のちに田中絹代が加わって)が応援し、次の木を目標に歩くシーン。フォードの「わが谷は緑なりき」からの引用かと思ったら、制作年代が1941年と同じなんですね。しかし、清水宏は温泉が好きだなあ。気むずかしい学者に斎藤達雄。やっぱりいい。斎藤が「公定価格以下で泊めてもらっているので」というところがあるが、温泉宿に公定価格があった。