ガラスの向こう側

午前中、「あった、あった。」が、石井ふく子編『東芝日曜劇場名作集』昭和51年刊。この年、1000回を迎えたテレビドラマが「東芝日曜劇場」だ。藤岡弘日色ともゑ「ガラスの向こう側」(1979)、山村聰大竹しのぶ西田敏行「きみちゃん」(1978)など、記憶に残るもの、検索してタイトルを確かめたら、1970年代末のものが多い。この二つは、もう一度見てみたい。
「ガラスの向こう側」はこういう話。舞台は札幌。夫(藤岡)は研究者、妻(日色)とのあいだに一人、息子(小学校高学年?)がいる。藤岡は厳格な父親に育てられ、「男は泣くな」と言われ、三秒で泣き止むことを命じられた。だから、泣くことを忘れた。それを、自分の息子にも課し、厳しく育てる。成績アップしたご褒美に、息子に自転車を買い与えるが、自動車事故で死んでしまう。しかし、藤岡は泣けない。悲嘆にくれる日色とのあいだに溝ができる。日色は息子が通ったアイススケートリンクへでかけ、そこで幻影を見るようになる。夫婦仲は最悪となる。そんなとき、日色が妊娠。新しい命を授かる。その出産の日、病院の廊下で、藤岡は誕生を聞き、涙を流す。というようなストーリーだったと思う。30年前に見たっきりで、けっこう場面場面も覚えている。それだけ印象的だったのだ。
ビッグイシュー」は、小島政二郎「食いしん坊」河出文庫
心優しき巨人詩人のアダキくんから、彼が所属する俳誌「澤」をおくられる。おお「澤」とは、またタイムリー。これがすごい。創刊十一年記念号で338ページもあるのだが、充実した「永田耕衣特集」を組んでいる。たぶん、林哲夫さんが詳細に紹介するはずで、ぼくなど言うことないのだが、巻頭のカラーグラビア始め、高橋陸郎と小澤實両氏の対談など、以後、永田耕衣研究に必需の文献となっている。装幀、デザインともに、内向きに感じられる俳誌としては、美しく開放的だ。これで1200円、というのも驚く。ぼくは、丸谷才一の文章で耕衣の存在を知る。「近海に鯛睦み居る涅槃像」「少年や六十年後の春の如し」「夢の世に葱を作りて寂しさよ」「カットグラス布に包まれ木箱の中」など、幻想的ともいえる名句が多い。吉岡実が高く称揚したのもうなずける。この耕衣が肉筆であちこち書き込みをした文庫を、「極める!」で善行堂が紹介していた。しかし、山本健吉は、この耕衣を認めていなかったという。あれ、川上弘美さんも「澤」の同人か。
「雲遊天下」107号は「うたがうまれるところ」特集。「にじみ」を出した二階堂和美さんに、ナンダロウくんが理解あるインタビューを試みて読ませる。構成の林さやか、とは、かつてぼくの担当者だった編集者の、あの「林さやか」さんだろうか。二階堂さんが僧侶、とは知らなかった。曲は風呂でつくる、「紅白に出たい」というのがおもしろい。

二階堂和美さん、へえ、こんな歌をうたうんだ。