ユリシーズとその手で

どこか、間違ってクリックしたみたいで、ネット環境が不調になり、日記もアップできず、あらゆる検索もできなかった。仕方なく(あ、いま雷が鳴りました)、JCOMに電話して、対策を考えてもらう。ぼくはパソコン音痴だし、相手は電話だけの対応。四苦八苦であれこれやってたら、いきなりつながった。終わったら汗だく、パソコン周りのあらゆる本や資料は床に飛び散り、飲みかけのアイス珈琲もぶちまける。やれやれ。
金曜は、午前中に早起きして、なんとか荻原魚雷くんの新刊『本と怠け者』(ちくま文庫)解説を仕上げて送付。魚雷くんのフェバリット作家についての文章が、ぎっしり詰まった文庫オリジナルです。魚雷くんとの出逢いとか、いろんなこと思い出しながら書いた。あ、エンテツさんの『大衆食堂パラダイス』と同じ月の発売(9月10日)です。
午後、神保町へ。先週、塩山さんが倒れ(術後順調のよし)、きゅうきょとりやめになった、神保町対談、ぼくの希望で、「荷風」(いま出ている号で休刊)編集発行人の壬生さんにお願いし、無事、果たした。「荷風」へは一度寄稿し、いつも送ってもらっている。壬生さんとは、神保町ですれ違うと「ああ、どうも」と言う程度の仲で、ちゃんと話したのは今回が初めて。さすが、神保町人、話がはずんで楽しかった。
終わってすぐ、サンデーへ移動して、いつもの仕事。「えびな書店」さんのインタビュー原稿、来週、火曜日発売に掲載予定。
コミガレで三冊。河出のグリーン版世界文学全集の『ユリシーズ 1』(丸谷才一ほか訳)が、あんまりかっこよくて(写真)、買ってしまう。矢崎泰久『編集後記』、塚本邦雄麒麟の騎手』と合わせて。それを帰りの中央線で網棚に乗せたら、またやっちまった。置き忘れて、電車を降りて、階段の途中で「!」。すぐ駅窓口に行って、事情を説明する。なかに何が入っているかと尋ねられ、「本3冊」。「題名とか、わかりますか」と言われ、とっさに出たのが「ユリシーズ」。若い駅員が、紙に「ユリシーズ」と可愛らしい文字で書いていた。聞き直していたから、彼、生涯で初めて「ユリシーズ」と書いた日だったかもしれない。
一年に一度は、こういうこと(網棚への置き忘れ)あるので、ぼくは慣れっこ。過去の二回は、とうとう荷物は出てこなかった。今回も、8割がたあきらめていたが、高尾に届いているという。その足で高尾まで。高尾山へ行くときはそうでもないが、また戻ってこなくてはならぬ、高尾までの時間の長いこと。
高尾の落とし物窓口も3度目ぐらいで、用紙に書くのも慣れていて、すぐ、ささっと記入すると、「ああ、完璧ですね」と窓口の人に言われた。完璧でない、人もいるのだろうか。
喜国雅彦さんから、新刊『本棚探偵の生還』(双葉社)をいただきました。例によって函入り。しかも今度は「只見線列車旅」など紀行を収録した別冊を含む、二分册。只見線は、ぼくに「鉄」が入った記念すべき路線。それが、今回の新潟、福島の大雨で、鉄橋が壊れたりした。マラソンを始めたり、一つ年下だが、喜国さん、若い。これはじっくり読ませていただきます。もう10年前くらいか、府中の西武で古本市があったとき、行ったら北尾トロさんがいて、少し話をしたが、そのとき、隣りにいたのがたぶん喜国さんで、面識がないので、挨拶しなかったが、失礼しました。もちろん、このシリーズ『本棚探偵の冒険』も『本棚探偵の回想』も持っております。新著も大事に読ませていただきます。敬具。