朝、『珈琲とエクレアと詩人』書評、ようやく送付。
昼前に外出。「ギンレイ」で残りの一本、これが見たかった「私を離さないで」を観る。土曜はいつもこうなのか。客席は空きなく満席。映画はかなり原作に忠実に、静かに描かれる。主演のキャシー役がはまり役で、少女時代から成長してからの差異がかぎりなく少ない。噴水まわりとか、海辺の桟橋のある風景とか、浜に打ち上げられた船とか、水まわりの情景がとてもよかった。原作を読んでいない客に「オリジナル」と使われることばの意味がわかるかしらんと、余計な心配をしたり。カセットテープが誰かの手により盗み去られるところは割愛しているんだな、とか。落ちついて細部まで観られたのがよかった。シャーロット・ランプリングはいったい幾つなのか、ぞっとする存在感。
古書会館即売展で、学研と平凡の雑誌ふろく二種を買い、東京堂へ。蝦名さん、牧野さんのトーク。牧野さんがネクタイしめて、神妙にしているのを初めて見た。蝦名さん、何点か掛け軸を持参していて、玉堂ほかを客に披露。トーク終り、旅猫さん、徳尾くんとドトールでお茶。「団地堂」の話で盛り上がる。東京の市へもよく来るらしい。かなり異色な人であることはたしか。

丸谷才一の最新評論集『樹液そして果実』を読んでいると、「『雲のゆき来』による中村真一郎論」という文章があって、この長篇を高く称揚し、あっと驚く奇手(読者に隠していることを、登場人物にではなく、読者に向って語りかける)について触れていて、どうしても読みたくなってくる。そういえば、さいきん、中村真一郎の小説、『四季』でも『冬』でもいいのだが、均一でさえまったく見なくなっている。アマゾンで、講談社文芸文庫版が安く入手できそうなので、注文した。急がない方は、筑摩現代文学大系で、福永武彦とペアの巻に、「雲のゆき来」が入っている。こちらなら100円で見つかりそうです。