雨に濡れても

神田古書会館「和洋会」を触り、サンデー毎日へ。「和洋会」、もうすぐ『高峰秀子との仕事』(斎藤明美さん)の著者インタビューがあるので、これ、持ってたはずだがと思いながらすぐには出ないので高峰秀子『まいまいつぶろ』単行本の方、を買う。垂水書房の吉田健一著作集も、なんだか触っているうち欲しくなった。天野忠詩集『長い夜の牧歌』書肆山田はあんまりみない一冊。大阪時代、面識のある詩人、浅山(浅は旧字)泰美さん『京都 銀月アパートの桜』は、ぼくのなかの京都散歩ブームにぴったりのエッセイ集。こんなの出てたの知らなかった近藤啓太郎安岡章太郎対談『齢八十いまなお勉強』光文社も。帳場で勘定していると、横に河内紀さんが。ぼくの買ったのを一瞥して、「さすが、いいのを買ってますね」と言われる。
ひとの印象はそんなものなのか、会館を出るとき、一年ぶりぐらいに会う、知り合いの古本屋さんに「ふっくらして、太った?」と言われた。
サン毎のお隣りさん、「エコノミスト」編集部に、もと東京人の花崎くんがいて、「花火」ものの書評コラムを頼まれる。
「ギンレイ」で「クレアモントホテル」と「しあわせの雨傘」を観る。後者では、あのカトリーヌ・ドヌーヴのコメディエンヌぶりをたっぷり堪能する。
夜、「コクテイル」で、朝日新聞福岡支局のNさんの取材を受ける。野呂邦暢「菖蒲忌」が明日、ということで、野呂について喋る。昼は国立で豊田健次さんの取材をしていたらしい。『夕暮の緑の光』(みすず書房)は、「大人の本棚」シリーズのなかで、売り上げ五位と知る。単純にうれしい。初版の解説では、ぼくがポカをやってしまい、再版以降、訂正分を読んでいただけるとありがたい。いま考えたら、五反田で罵倒された(以後、五反田に行けなくなった)のは、たぶん、解説の間違いを指摘したのだと思う。言い方があるだろう、とは思うが。
コクテイル」には、ぼくが一番好きなカメラマンS夫妻ほか、次々と知り合いが現れ、Nさんが辞したあとも、長々と飲み続ける。今日から西荻魯山」で開かれる「大浦裕記・七尾うた子」展の、七尾さんに挨拶され、『古本道場』を読んでくれたとのこと。握手する。どんなイヤなことがあっても、「コクテイル」は、いつもぼくをいい気持ちにさせてくれる酒場だ。もっと行かなくちゃ、と小雨の帰り道に思う。