昨夜、BSで、これもデジマスの成瀬「めし」を観る。4度目ぐらいか。軽快ながら、奥行きがあって、正確な描写を含めて一級の作品だ。これまで気にしなかったが、「鉄」分が入ってから、鉄道が気になる。上原と原夫婦が乗り降りする駅は、大阪の南、阪堺線「天神ノ森」。おそらく、いまでもホームの印象はあまり変わらないはず。今度、行ってみよう。原が東京の実家へ帰ってから、ひんぱんに電車、駅、線路などが映る。原の実家は、南武線「矢向」駅。だから、じつは神奈川だ。ここも、いまだ高架になっていないから、少しは面影が残っているかも。今度、行ってみよう。原が姪を家に送っていくシーン。帰り、線路脇から多摩川へ出る。おそらく「和泉多摩川」附近ではないか。今度、行ってみよう。「めし」のロケ地など、川本三郎さんが何かで書いているかもしれない。チェックしてみます。
それから、上原謙と言えば「大根」と言われるが、ぼくはちっともそうは思わない。「めし」で見せた、ちょっと気が弱い、頼りな気な中年男は、あれで充分。やりすぎ、が何より困ります。
「めし」がないので、サイレントの「限りなき舗道」を。じつにスタイリッシュな画面ですね。木村伊兵衛の写真みたい。

「古書通信」原稿は、先日のバス多摩丘陵乗り継ぎの旅を書く。
文藝春秋2月号(芥川賞受賞号)、特集「秘めたる恋55」で、ねじめ正一北村太郎(詩神を呼び覚ました親友の妻との駆け落ち)を書いている。そうか、北村太郎が新聞社を退社し、田村隆一夫人との恋に走ったのが54か。いまのぼくの年だ。ある出版パーティの帰り、タクシーに乗って帰るねじめ正一新宿駅で切符を買う北村太郎を見かける。「その姿はドキッとするほどセクシーであった。一人が似合う人なのだなあと思った」と書く。同じ特集でエモやん(江本孟紀)が、市川崑に乞われ、映画「細雪」で吉永小百合の結婚相手として出演した話を書いている。出演依頼があったとき、「谷崎潤一郎を知っているか?」と聞かれ、「知りません」と答えて、市川を驚かせている。いやあ、かえってすごいです。谷崎潤一郎を知らない日本人がいるなんて。