アン様も中ぐらいなり年の暮れ

okatake2010-12-18

十八日快晴。夜、都立大学「目黒パーシモンホール」のアン・サリーライブにあわせて行動。まずは五反田だ。会場に近づくと、見知らぬ男性から、「岡崎さんですか、今朝、週刊ブックレビューを見ました」とにこやかに声をかけられる。礼を言って別れ、階下の雑本漁りをしてると豆ちゃんとユーセンくん。あとでお茶をしようと約束して、二階へ上がる。坪内祐三さんがいて、少し言葉を交わす。裏の棚にまわったところで、見知らぬ男性から、ぼくの顔を認めたかと思ったら、思いがけぬ痛罵を受ける。堪え難い屈辱で、名乗って詰め寄ると、シラを切り、「本が見られませーん」と帳場に訴える。人を怒らせる事に慣れているふうで、瞬間、めまいがするほど怒りがこみあげる。手が出なくてよかった。とにかく、このご仁、要するにぼくの書く文章もぼくという存在も気に入らないらしいのだ。まいったなあ。ここで無視して放っておけばよかったが、階下でまた会い、声をかけたところ、「(批判の)文章を書いて送るから住所を教えろ」と言い出す。これで、切れて、それまではおだやかに話していたのだが、ののしってしまった。これがいけない。
あきらかに大人の分別を越えた相手に対しては、こちらが大人にならなければいけない、とこれはぼくの処世術の鉄則のはずだったが、コップの中の耐性があふれて、感情的になってしまった。最後のののしりは余計だった。戦争で言えば作戦失敗。これは、どこのどなたか知らないが、お詫びしておきます。自分に対しても愛想が尽き、それで、余計に空しくなった。
このあと、豆ちゃんとユーセンくんとお茶したことはよかった。事情を話して、クッションになってくれたからだ。豆ちゃん、吉祥寺ジュンクで働いているが、契約社員に格上げされたとのこと。これは生活の安定を意味する。よかった。
二人と別れ、怒りが収まらないまま、予定していた通り、戸越へ出て、歩いて武蔵小山まで。途中「小川書店」の外観を写真に撮り、少しなかを覗く。戦記ものがずいぶん揃っている。黒っぽい本の棚もあり、鉄道、航空、乗物も充実。商店街の「ブ」を軽くなぜて東急を乗り継ぎ、都立大学へ。
会場で晩鮭亭さんと合流。並んで、アン様の登場を待つ。ところが、この日、前半を別の女性歌手が歌い、アン様は後半。この時間が長く、また臓腑がむずむずしてきた。おかげで、せっかくのアン様の天上的歌声も中ぐらいしか楽しめない。先行発売のニューアルバム「fo:rest」を買う。
大変な一日となってしまった。人生はわけのわからない穴ぼこだらけで、そこに足を取られたとき、どう対処するかで人徳、資質が問われる。今日のぼくは最低だ。今年残りを慎重に過ごし、リフレッシュして新年を迎えたい。
今日、五反田で買った本のなかでは、清水哲男詩集『水がめ(ほんとは難しい字)座の水』紫陽社がうれしい一冊。あと、和田誠表紙キネ旬1974年1月号「男はつらいよ・私の寅さん」特集のなかで、川本三郎さんが撮影現場のルポを書いている。角川mini文庫の寺山修司『ポケットに名言を』も、いまとなっては珍しく入手困難な一冊。とうとう今夜は眠れなかった。