さあ、今日は仕事だ

okatake2010-10-11

土日と外出で遊んでしまったので、今日はたいへんです。がんばって仕事をします。3つ原稿を書いて、明日の取材の準備。
なんだ、土曜日、晴れちゃったのか。それでもこの日に「一箱」が延期されていたら、「西荻ブックマーク」の務めは果たせなかった。
高円寺の即売会で少し買って、西荻へ。「赤レンガ」で福間健二さんと少し話す。福間さんの講演から始まり、第二部はプロジェクターとスクリーンが用意され、「海炭市叙景」のダイジェストと予告編を見ながら、熊切監督とプロデューサーの越川さんの話を、ぼくが進行する。主要な役者以外は、ほとんど現地調達のズブの素人だったと聞いてビックリ。猫ババアのおばあさん、スナックのホステスやママなど、みんなめちゃくちゃリアルで巧い。けっこう函館の夜を呑み歩くことで、出演者をハンティングしていったようだ。熊切さん、酔いつつ、醒めて観察していたんだな。佐藤泰志の親友で、今回の映画化に尽力された函館の西堀さん(ぼくも函館でお世話になった)が、市電の運転手役で出演し、ちゃんと市電を運転しているのが謎だったが、そのからくりが監督の口から明かされた。市電って、前と後ろに運転台があるが、西堀さんはいわば本当には運転せず運転台にいて、本物の市電の運転手が、バックで市電を動かした。それを西堀さん側から撮れば、ほんとうに運転しているみたいに見える。なるほどなあ。「まだ若い廃墟」の妹役・谷村美月ちゃんは素朴で可愛らしかったが、寒い空気のなか白い息を吐く姿を想像して、これはもう谷村美月と熊切、越川両者の意見が一致した。兄役の竹原ピストルさんはミュージシャン。どうりで初めて見る人だと思った。ありきたりなイケメンでないところが実在感がありました。
などなど、今回は、ぼく自身、楽しみながら時間を過ごしました。
小学館文庫の担当・Mさんとも打ち上げで話す。小学館文庫『森崎書店の日々』もMさんかと思ったら、あれはまた別の人間です、と言われ、こうなると小学館文庫の今後のランナップが楽しみだ。
高円寺では、裸本だが光文社版「少年探偵」シリーズ『虎の牙』を100円で買う。これは山川惣治の挿絵がいいんですね。
あ、すでに告知した11月の雑司ヶ谷での古本講座ですが、豊島区以外の人でもだいじょうぶとのことです。区外、さいたま、神奈川、千葉などからも、よかったらおこしください。21日は「みちくさ」市もあります。

3つ目の原稿がようやく書けたので、先日の西荻ブックマークでの福間さんの講演で、印象的なことばいくつか。
佐藤は高校時代から、その文業が認められていて、自身も小説家以外の道を考えていなかった。20歳前に、それほど自分の道をはっきり決めてしまうことは、かならずしも幸せとは言えないのではないか。中央の文芸誌に作品が掲載されると、その二倍は同人誌に書かないといけない(つまりタダ原稿を)という圧迫感が佐藤にはあったようだ。佐藤の作品は、前半が大傑作、後半のびきれず、主人公が傷ついて終わるというようなかたちが多く、それは佐藤の弱さ。芥川賞候補に何回というようなことより、同人誌から出発し、いかに金がもらえる作家になるかということが重要。そこで、「もうひとつの朝」事件など、文芸誌とのつきあいで、けっこう佐藤は消耗していく。「海炭市叙景」は、そんななかで、半ばやけくそになって書いた作品。佐藤を死においやった原因の一つは、トランキナイザーの服用があって、精神科の医者には「あなたの病気を治すためには、小説をやめるしかない」と言われる。しかし、佐藤にとって、それは死を選ぶしかない。佐藤泰志の作品は、出て来る人物がみんな佐藤で、佐藤泰志だらけの作品だったと福間さんは言う。
身近にいた、よき理解者の佐藤論として、さすがに聴きごたえがありました。