今日は買うばっかり

okatake2010-09-20

昨日、みちくさで売るばっかりだったので、今日、午後、荻窪から西荻へ。古本さんぽ。
「ささま」では、吉見俊哉ほか『メディアとしての電話』弘文堂を525円で店内で買った以外は、みんな均一。
西荻音羽館」店頭に、豆ちゃん遊仙くんがいた。勝手に均一から選び、二人に押しつける。山崎くんには第二子誕生。豆ちゃんは、吉祥寺にできるジュンクへ異動。また中央線がにぎやかになる。音羽館ではいきなり均一で、伊藤整全集の24『知恵の木の実』という雑文集の巻を買う。これが重いの。井伏鱒二『片棒かつぎ』は河出新書、裸本だがハードカバー造本で、奥付を見ると「非売品」とある。どういう経緯で出た本だろうか。しかし、カバーがなくとも、いい感じ。店内では、日本小説文庫の小山内薫『大川端』を500円で。その他もろもろ。
このあと「なずな屋」へ寄ったら、店に、あきらかに一般人とは空気の違う、若いときは美人だっただろう年輩の女性が、大きなよく通る声で誰にというではなく喋っている。そういうふうに、自分を半径3メートル以上に存在をふりまくのに慣れている感じ。最初は澄ちゃんに話しているのかと思ったが、中央の背中合わせの本棚の向うにいる男性に喋っている。男性は、「ああ」とか「うん」とか、すこぶる素っ気ない。けっきょく何も買わずに出ていったのだが、それまで遠慮して入口近くにいたので、帳場に近づくと、澄ちゃんが丸い目をくりくりさせながら「いまの男性、岸部一徳さん、ですよね?」という。うそっ! あわてて、外へ飛び出し、首を左右に振り、すでに遠ざかっていく男性は、まごうことなく岸部一徳。ほんと、気配をさせずに、いる術を知っている。たぶん、町を歩いていても、気付かれにくいんじゃないかな。
店頭に数種、むかしの観光地の絵葉書セットが100円で出てたのを3つ買う。これは、礼状、返信に使う。ちょっとうろ覚えながら澄ちゃんの話。
「さいきん、一週間に一回(二週間だったかも)ぐらい来る、岡崎さんぐらい背が高い、後期高齢者の男性がいて、かならず私に「これで、ジーシでも買いなさい」と200円くれるんです」
ジーシとは「ジュース」のこと。最初は100円だったが、「おっと、これではジーシが買えないな」と気付いて200円に値上がりしたらしい。
「それ、ひょっとしてプロポーズじゃないの。最初100円が200円で、だんだん値上がりして、そのうち」とぼくがまぜっかえす。なんだか井伏鱒二になったような気分になって(帰りの電車で『片棒かつぎ』を読んでたから)、ちょっと書き留めておこうと思った。
しかし、古本屋さんへ寄ると、いろんな場面に遭遇するものです。今夜、12時過ぎ、1チャンで放送される塩見三省主演のドラマに「なずな屋」が登場します。
「みちくさ」では、メガネをかけた若い女の子が、ぼくの持ってきた本の中から、まず結城昌治志ん生一代(上下)』朝日文庫をつかみ、ほか落語演芸関係の本ばかりに手を出す。「落語、好き、なんや」と聞くと、大学生で落研に入っているという。「芸名、何ていうの?」と聞いたら、お囃子のほうなんです、でも落語が好きで、という。うれしくなってきた。よっしゃ、と100円引きにする。「がんばりや」「ありがごうございます」
「あのう、本物ですか」と、作ってきた看板を見た二人連れの女性が言う。どうも岡崎武志を知ってくれている人らしい。「本物か、と言われら困るけど、いちおう、岡崎武志です」と返答する。聞くと、二人とも書店員で、さすが、いい本を選んで買っていった。おみくじを引いたら、二人とも「凶」で、これも珍しい。
ハニカミくんは、福武文庫、庄野潤三ザボンの花』を買ってくれた。少しオマケする。庄野潤三を買う高校生、というのがうれしいじゃないか。