「書肆紅屋の本」出ました

okatake2010-07-18

読書ブログ「書肆紅屋」は出版界の動向をいち早くキャッチし、簡潔に報告することで知られている。
http://d.hatena.ne.jp/beniya/
また、一箱古本市始め、各種イベントに参加し、またトークイベントに出没し、その中身をていねいに記録、報告している。そんなブログが一冊の本にまとまった。『書肆紅屋の本 2007年8月〜2009年12月』論創社。帯に「ぜんぶ本の話 読む・買う・売る」とあるが、ここに「記す」を加えてもいいだろう。昨年までの2年半、出版界の上部から下部まで、どんな動きがあったが、これを読めばわかる。律儀で貴重な記録だ。知らなかった、紅屋さん、大学の四年間、水道橋の雄峰堂書店で書店員アルバイトをしてたのね。筋金入りのブックマンだ。
また、京都で善行堂オープンとあれば、日帰りで(もちろん自費で)、あっさりと駆けつけてしまう行動力がすごい。トークショーの会場で、紅屋さんの姿を見つけると、ああ、今日はこれでだいじょうぶ、記録されるなと安心する。本人は大変だけどね。ぼくの名前もあちこちに出てきて、善行とのトークなど再現してもらっているのでありがたい。ぼく自身はまったく忘れてしまっているから。新刊、古本あわせ、バランスよく、よく買い、よく読み、よく報告している。あの大きな目玉でぎょろぎょろと、これからもしょぼくれた本業界を見張り塔からずっと観察していただきたい。この本、装幀もすっきり鮮やかに抜けたいい仕上がり。

ジュンク堂京都BAL店で今日から始まる、黒岩比佐子さん『古書の森 逍遥』発刊フェアーの小冊子が届きました。まったく、こういう紙ものを作らせると、工作舎はうまいですねえ。ほれぼれする。裏面は「スムース」同人6名が明治大正昭和本の選書と、黒岩さんへのメッセージを寄せている。ぼくのだけ、文字が少し大きいのは、行数が少なかったからですね。でもまあ、言いたいことはここに尽きている。会期中、京都へ行けるよう神様にお願いしてみます。

いつぞや、万城目「鴨川ホルモー」学(で、あってますか表記等)が朝日新聞夕刊の取材に答えていて、いちばん感心したのが、チャゲ&飛鳥の大ファンと公言したこと。いや、なかなか言えません。サザンのファンとか、アントニオ・カルロス・ジョビンのファンとか、言い逃れのきく無難な答えは無数にあるが、ちゃんと勇気をもって、チャゲアスの音楽を聞いていると言う。その勇気を買った。まわりで聞いたことないもの、堂々と、「わたし、チャゲアスのファンです」って言う人。これ、けっこう大事な問題で、音楽の好き嫌いに見えないヒエラルキーがあるってことだ。かえってぼくみたいに、伊藤咲子の「乙女のワルツ」が好き、あたりは言いやすい。坂崎幸之助のファンとは言えても、アルフィーのファンもちょっと言いにくいとか。いろいろありますよ。吉田拓郎が好きってのも、じつはちょっと微妙で、六十年配の高田渡友川かずきなどのファンの男性に酒場でそう言うと、「あんなの、ぼくら、若いとき、一番ダメって言ってたよ」と面と向って言われた。これ、言い負かしようがないことですね。ぼくは高田渡だって大好きだけど。その人にとっては、拓郎と渡の両方を好きってことは許せないでしょう。難しいものです。
好きってことは、もうしょうがないことで、ほんとうはちょっとおかしいんですけどね。あ、文章の世界では、小沢昭一のファンと言えても、永六輔のファンとは言いにくいムードがありますね。ぼくはどちらもファン。節操がないのかもしれません。