六月は雨に煙って何もかもにじませている

okatake2010-06-17

あれこれ、告知や受贈書の報告、さぼっています。すいません。気ままにやらせてもらっていいですか。かなり疲れてまして。
朝、TBS。佐野章二ビッグイシューの挑戦』講談社を紹介。最後に「じつは、ぼくもこの雑誌に連載をしていまして」とつけくわえると、森本さんに「どうして、そういうことをもっと早く言わないんですか」と言われる。宣伝になるといかんかなあ、と思ったのだが。
ハイヤー飯田橋へ移動。「ギンレイ」で一本だけ見る。コートニー・ハントフローズン・リバー』。監督も主演女優も脇役も知っている人が誰もいない。ギャンブル狂の夫に金を持ち逃げ、途方にくれる白人女性(二人の子持ち)と、子どもを祖母に取られた居留地モホーク族の若い女が、凍った川をカナダ国境を越え、密入国者を車のトランクに入れて運ぶヤバい仕事をする。どちらも凍てつく地で、トレイラーハウスに住んでいる。最後に友情のようなものが二人に芽生えるという、まあ、わりあいわかりやすい展開。星五つのところ、星三つ。
帰り、荻窪「ささま」へ寄るが、均一でしゃがんでいると、そのまま立ち上がれなくなる。眠気がピークだ。105円本2冊だけ買って、西荻へ移動。「音羽館」の均一で、武田泰淳追悼の「文藝」に、深沢七郎武田百合子対談が掲載されていて、これを読みたかったが、千円札しかない。これでお釣りをもらうわけにいかない。けっきょく手放す。「興居島屋」では、完全にレジ横の丸椅子に座り込んで四方山話。「ブロンディ」絵本450円は、戦中の発行で、好戦的な内容。日独伊のリーダーの似顔を悪意を持って描き、徹底的にやっつけている。遠藤周作『切支丹の里』中公文庫200円はこのところ探していた一冊でよかった。
ねじめ正一荒地の恋』をいまごろ読んで感心した。北村太郎田村隆一鮎川信夫が実名で登場。北村が田村の妻を寝取り、田村は新しい恋に走る。そのいざこざを描き切る。当人たちをよく知る人たちには評判が悪かったが、ぼくは、ねじめさん、よくここまで書き切ったなあ、と感服した。作家としての成熟も感じる。たとえばこんなところ。
「おそらくその道筋が日常なのだ。家庭を持つということは何かについて思い巡らす道筋を持つということで、その道筋があるから家庭はバラバラにならずに済んでいるのだ。北村はその道筋から横道にそれた。大きく曲がったつもりだったが、しかし、以前の道筋は案外強固に染みついているのかもしれなかった」
ここにはよく生きて、よく考え抜かれた実人生から救われた鋭い省察がある。映画にしてほしいものだ。やっぱり越川さん、kな。
「一色文庫」で買った、J・R・ヒメーネス『プラテーロとわたし』岩波文庫を、帰りのこだまの中から、ちびりちびりと読んでいる。すばらしい文章に、からまった心がほどけていくようだ。
週刊現代」から願ってもない本の書評依頼がくる。難しいが、書くのが楽しみ。
「読売新聞九州版」「西日本新聞」など、「菖蒲忌」と野呂文学再評価を報じた記事が次々と送られてくる。ぼくも「長崎新聞」に、書くように頼まれている。もっともっと、再評価の機運が高まりますように。