土日画廊からコクテイル

okatake2010-05-23

昨日は、時事通信から書評依頼があったが、すでに他所に書くことが決っていた本で、ざんねんながら断る。仕事は一つでも入るとうれしいのだが、うまくいかないものだ。
午後、外出。高円寺「中央」展を攻めて、文庫含め5冊ほど買う。いちばんの買い物は、よくはわからかったけど1982年立風書房刊の『ピーター・パンとウェンディ』がアトウェルの美しい挿絵入りで500円。
都丸の壁均一でもごそごそと三冊買い、東中野へ。このあと新井薬師の住宅街にある画廊「土日画廊」へ行く。久住卓也さんの手拭い展が開かれていて、今夜はわれらが尾崎澄子さんと卓ちゃんとのトークがあるのだ。中央線から新井薬師へ行くには、高円寺からだと野方行きのバスに乗り、西武新宿線に乗り換え、ということだろうが、愛用している『東京 山手・下町散歩』地図を見ると、東中野から新井薬師方面へ斜めに延びている道がある。東中野には未踏の「金沢書店」、斜めの道には途中「みなづき書店」と2軒古本屋がある。
そう考えると、ちょっと楽しくなってきて東中野駅を、いつもとは違う東口出口から出る。駅からすぐの「金沢」はしかし店を閉じ、水道橋に事務所が移転していた。大通りへ戻り、東中野「ブ」へいちおう寄ると、ここにいいものがありました。極美の海野弘『モダン・シティふたたび』が400円。転んでもただでは起きないとはこのこと。東中野「ブ」は値付けも直営店とは少し違うし、品揃えもおもしろい。注目店です。
ここからあとはまっすぐ新井薬師方面へ。早稲田通りへ抜ける古い商店街も、甘みどころがあったり、なんだかいい感じ。下町の匂いを残すエリアであります。青原寺交番から上高田まではちょっとした寺町。静かな風情です。散歩するのにはいい。
功運寺近くまで来たとき、向うから車椅子を押した長髪の若者がこちらに手を振っている。なんだクボタくんか。聞くと、このあたりにあるはずの銭湯を探しているという。ぼくは地図を片手に歩いているので、それなら「大黒湯」だとすぐに教える。『山手・下町散歩』はほんと、すごい地図帖だ。
そこからすぐの「みなづき」も結局閉まっていた。ふだんも開いているふうではなかったが、どうだろうか。迷うことなく到着した「土日画廊」は、童謡「たきび」で歌われた垣根の旧家のまさに「曲がり角」にある、普通の木造家屋。その二階が画廊になっている。なんともいい感じ。わいわいと仲間が集まり、他人ん家の客間で話をするように、久住くん澄ちゃんが、シルクスクリーンてぬぐい誕生の秘話と、制作工程の話をわかりやすくする。久住くんが、イラストレーターとして、机に向かい発注された細かい絵仕事を続けるうち、煮詰まってしまい、兄弟展が開かれたとき、とにかく急場で壁を埋めるためでかい絵を思い切り描いたとき解放感が芽生え、それが澄ちゃんに誘われ、手拭い制作をしたとき「これだ」と雷に打たれた、という話が興味深かった。久住くんは絵、ぼくは文章だが、机仕事という点では共通していて、ちょっとわかるのだ。
トークが終わって、そのまま宴会となり、タクシーに分乗して高円寺「コクテイル」へ流れる。「コクテイル」はすでに満杯だったが、渋る狩野くんを脅すように説き伏せ(狩野くん、本当に悪かった)、未整理の二階へみんなでなだれこむ。本や木材が散乱する埃まみれの部屋を、まず掃除機をかけ、スペースを作って、適当に板を使ってテーブルを作る。ここにコウエンジ組のイノウエさん、魚雷くんが加わって、「土日画廊」に続き、まるで友達の下宿のような宴会が続く。終電間際にぼくとコウノは帰途についたが、ほかの面々は魚雷くんの旗ふりでまた移動。たぶん、やけくそでまた朝まで飲んだのだろう。