「読書人」対談

okatake2010-05-18

週刊読書人」(5月14日)巻頭が島田裕巳香山リカ対談で『1Q84』を読み解いている。さすがだな、と思わせる発言がいくつかあったので紹介しておく。
まず、「3」はそもそも、当初から予定されていたのか。「2」までで、読者が「分からない」と言ったからきゅうきょ続きを書いたのではないか、と香山。島田は、これは「アメリカのテレビドラマに似た作り方」だと言う。13回ワンクールで、視聴率が高いと続きが作られる。謎はちゃんと解かれる必要はなくて、「最終回は面白くないことが多い」。
香山は「1Q84」の時代設定が80年代なのに、「全く80年代的なものがない」と指摘。作品に出てくるのは「児童虐待」「ドメスティックバイオレンス」など「90年代以降のイシュー」。携帯とネットが出てこないことだけが80年代的。それも「『君の名は』的な、なかなか会えない状況を作るために、ネット以前の話にしているだけじゃないか」等々。島田発言の、小松のモデルが安原顯というのもぼくは気づきませんでした。なるほどねえ。牛河は『ねじまき鳥クロニクル』にも登場する、ってそうだっけ。
まあ、くわしくは本紙を読んでもらうとして、もう少し引く。香山が、まさしく80年代に工作舎で雑用をしていた、というので驚いた。Iくんと一緒の職場にいたのか。それに島田もヤマギシ会脱退後、工作舎と結びついたと言っている。松岡正剛というカリスマがいて、これは部分だけ抜き出すと誤解を招くかもしれないが、「オウムと工作舎は似たところがあるよね」と島田が言っている。香山は、組織の構造というより、「集まって来る人のメンタリティには似たところがあったかも」と。
それと、もう一つだけ。これだけ「1Q84」が売れたことについて、「だから僕は、本離れじゃなくて、本の方が離れていると思う。本当は読者がいるのに」というひとことは、ちょっとピンで自分の胸に留めておこうと思った。以上。
まあ、ぜひ異論反論あるにせよ、「読書人」読んでみてください。