細い三日月に寄り添って金星

okatake2010-05-17

昨夜は早く寝たので、早起きして仕事。「ビッグイシュー」は、クレジオ『海を見たことがなかった少年』、「あった、あった。」は昭和29年「少女サロン」正月号ふろく「室内ゆうぎブック」について書く。
「図書」ゲラに赤字を入れてポストに投函。そのままふらふらと自転車で、また玉川上水沿いの緑陰をひた走り、昭島「ブ」へ。同じフロアの真向かいが新刊書店で、いつも閑散としている。だいじょうぶかしらん。昭島「ブ」はケータイセドリの戦場で、数名がセルフ籠を積み上げ、ケータイでちゃかちゃかやっている。理由は説明できないが、なんか、不愉快なんだよな。4箱つみあげて、まだせっせとやってる男がいたが、いくら105円でもあれだけ買えば、けっこうな額になる。ほんとうに儲かるのか。もちろん儲かるからやっているのだ。帰り、もう道を覚えた、昭和記念公園沿いの並木道を走ったが、途中、自転車のうしろにカートをつけて、山のように空き缶の袋を積み上げて走っている老人がいた。ぼくは、こちらには「がんばれ!」と言いたくなる。単純なんですね。労働としての対価の問題だろう。
新潮文庫サルトル『水いらず』が改編されて、カバーも変わっていることに気づき、買う。前も書いたが、ぼくは「水いらず」という短編が好きで、最初の「リュリュが真っ裸で寝るのは、シーツに体をすりつけるのが好きなのと、洗濯賃が高くつくからだった」という文章を読むだけで、何冊でも欲しくなる。「リュリュはきたないのがいやではなかった。きたないほうがしっくりする。よごれはしんみりした影をつくるものだ」という感覚もいい。
立川「オリオン書房」へ行って、TBS用の本、阿部了写真、阿部直美文『おべんとうの時間』木楽舎を買う。木楽舎は「ソトコト」を出している出版社。
昨日、今日と、宵の細い三日月がほんとうにきれいで、昨晩は、金星がぴったりくっついたように光って、まるで絵のようだった。しばらく見とれる。
negiさんがコピーしてファクスしてくれた、昨日の毎日、池内紀さんの『夕暮の緑の光』書評を、じっくり読む。なんていい文章だろう。池内さんに選と解説を頼んだほうがよかったのじゃないかと、ちょっと後ろめたい気持ちに襲われる。
夜は上々堂へ追加と精算。ずっと低迷していたが、今月はちょっとよかった。ほんのちょっと、ですよ。連雀通り「ブ」で浦沢直樹『ビリーバッド 1』を買う。105円じゃないですよ。下山事件に端を発する、日本戦後史の裏面、巨悪の存在を書こうという試み。浦沢でなければ、とても漫画雑誌で許されないようなテーマだ。白洲次郎が出てきます。