いい本はチョコレートの匂いがする

okatake2010-03-26

朝、ほんとにひさしぶりに「世界ふれあい街歩き」を見た。一時、再放送を含め、狂ったようにかじりついて見ていたが、ある時、ふと見なくなった。見ればやっぱりおもしろい。台湾の「鹿港」。信仰篤い路地のある海に近い町で、古い日本の町を感じさせる。無性に旅心に誘われる。「青春18」もこの春は買わず。
昨日の朝、TBS。道がすごく混んで、年度末だなあ、移動のシーズンだなあ、と思う。今週、まったく準備ができず、実業之日本社から送られてきた原宏一『大仏男』を速読し、あわてて放送原稿を送ったのだが、それを森本さんは見破ったか。出番の前に、控え室で「岡崎さん、これ、ほんとうにおもしろいんですか?」と突っ込まれる。はげしく動揺。「いやああ、おもしろいです」と言い切る。放送では、元気を出して、調子良く紹介したので、「ああ、おもしろそうですね」(森本さん)、「うふ、お話しがおもしろかったです」(遠藤さん)と言われ、ほっとする。生放送だから、ほんと、気が気じゃないです。
帰宅して、冷たい雨に降り込まれ、家にこもる。ちょっと頓挫していた筑摩の原稿を再開。小夜福子のエッセイ集『おひたち記』の連載原稿を、川崎賢子『宝塚のユートピア』(岩波新書)をつっかい棒にして、話をふくらませる。でも、こういう勉強は楽しい。
彷書月刊」4月号は「大逆事件百年」。10月号で休刊が決っているからあと6号。ぼくの連載は今号で147回目。例のグーグルマップでの古本屋検索熱を書いています。あと6回か。これが終わったら、臓器を一つ失ったような気分になるだろうな。残りの6回を大事に書こう。nanakikaeさん「本の生みで溺れる夢を見た」も48回目。大学の研修旅行で京都へ来たのだが、集団行動の一日を除いて、寸暇を惜しんで古本屋まわりをしている。えらいなあ。いきなり「アスタルテ書房」へ行くところも豪速球投手だ。善行堂へは二回も行っている。金子彰子さんとはツィッター仲間らしく、『二月十四日』の名前も出てくる。山本がkaeさんに「いい本はチョコレートみたいないいにおいがするんだ」と言って、kaeさんが「持っていた本をそっと鼻先に近付けて頷いた」という個所にしびれる。さすが古本ソムリエだ。ついに「古本の香り」の領域にまで、ソムリエぶりを発揮。かっぱえびせんの匂いのする古本、というんではこんな名シーンにならない。
産経の生田さんから珍しく電話。新聞社を早期退職する、という。時間を使って、もっと研究したいことがあるそうだ。「それはいいですねえ」と新しい門出を祝福する。
ほんとうの春が待ち遠しい。

くり返す波の教えるのは/ただの一度も本当のくり返しは無いという事/けもののように言葉をもたなかったら/このさびしい今のひろがりを/無心に吠えながら耐える事もできようものを
谷川俊太郎「後悔」『うつむく青年』所収)