メルヴィル「海の沈黙」

okatake2010-03-18

函館から「海炭市叙景」のシナリオと、地元で映画化の新聞記事が送られてきた。撮影も順調にすすみ、秋には公開。海外の映画祭への出品も考えているという。佐藤泰志の友人で、映画化の準備をすすめてきた西堀さんも大事な役で出演するようだ。
いよいよ、だ、
移転した高円寺「古本酒場コクテイル」が3月27日オープン、だそうです。こちらも、いよいよ。
岩波ホールメルヴィルの初監督作「海の沈黙」が明日まで、というので、あわてて支度して出ていく。QBで散髪して、神保町を回遊。眼のさめるような買い物はないが、そこそこ満足。
岩波ホールはいったい何年ぶりだろう。「八月の鯨」を見て以来? まさかそんなことはないか。観客が「ギンレイ」とはまったく違う。老年の知的スノッブとでもいうべきか。ケータイを見ている人がまわりになく、本を読んで待つひとが多い。目の前のご老体は、ワイド版の岩波文庫を読んでおられる。
「海の沈黙」は、途中少しうつらうつらしたが、筋がわからなくなるということはない。ほとんど一軒の家のなかで話がすすむ。ずっと横顔だった(一言もセリフなし)娘が、最後、アップになって、そして「アデュー」と口にする。これがこの映画の眼目です。
帰り「音羽館」へ寄って、自分の本を含めゴソゴソと買う。
行き帰り、ウェッジからいただいた『榛地和装本 終篇』を、ガツガツと読む。もと河出の編集者で、本の装幀も手がけた藤田三男による編集稼業の回想。和田芳恵山本健吉野口冨士男といきなり引き込まれる。編集の裏話や作家とのつきあいの話なのだが、ぼくにはこういう話がいちばんおもしろいな。
挟み込まれた編集部から「各位」へと書かれた紙には、「ご支援を賜りましたウェッジ文庫は、諸般の事情により四月以降当面新刊の発刊を中止することになりました」とはっきり書いてある。どう考えても、あの定価で、あんな渋いラインナップがいつまでも続くとは思えない。むしろ、ここまでよく出した、ごくろうさまと言いたい。惜しいとも休刊を不満とも言う気はない。「紙の本はなくなる」とか、良書が低調とか、どこを向いても暗く不景気な話ばかりのなかで、ウェッジ文庫は、ひととき雨上がりにかかった虹のような文庫だった。さあ、未所持のものはいまからすぐ買っておけ。いったん品切れになったら、こんどは古書価が高騰しそうな書目ばかりだ。
今夜、三鷹上々堂」へ精算、追加補充しました。お近くの方はまたおこしください。