芥川「蜜柑」に隠された謎 スムース13号発売!

okatake2010-01-29

午前中、共同通信書評、パット・セイン『老人の歴史』東洋書林をなんとか仕上げて送稿。締め切りに間に合った。500ページ近い大冊の、さわりを撫でるように紹介した感じだ。正午ごろ神保町。和洋会を少し覗き、三冊買う。永井萠二『ささぶね船長』新潮社(昭和30年)は扶桑書房で300円。戦後浮浪児となった三人の少年少女が更生するまでのドキュメンタリー小説。児童書である。六浦光雄の挿絵があんまり素晴らしくて買った(口絵写真)。秋山正美『昭和のお母さんを見なおす本』大修館は、昭和史の資料として。300円。加藤嶺夫『東京 消えた街角』は写真集。裸本だったので500円。しかも燻されたような、たぶんタバコの匂いがついている。それでも、昭和40年代前半の東京各地の街角写真がいい。撮影場所が書いてあるので、これを持って、現在同じ場所がどうなっているか確かめてみたい。
サンデー毎日で仕事をして、帰り「ギンレイ」でニック・カサヴェデス「私の中のあなた」を見る。子供の難病もので、家族の絆を描いた、と書けば、ちょっとウエッとなるでしょう。ところが、ちょっとひねり技があって、出てくる子供たちが本当にみんな巧いの。ぼくはけっこう感情移入して見てしまいました。母親がキャメロン・ディアス。それに弁護士役でアレック・ボールドウィンが出てくるが、おやおや、ずいぶん太ってしまったなあ。飯田橋「ブ」で文庫など数冊。
電車のなかではずっと石原千秋『あの作家の隠れた名作』PHP新書を読んでいた。これはタイトルが悪い。だって朔太郎「猫町」、芥川「蜜柑」、太宰治「女生徒」、吉行淳之介「夕暮まで」なんて、隠れた、と言えるかい。でも中身はおもしろい。あっと驚く指摘もある。たとえば、これは石原の発見ではないらしいが、芥川「蜜柑」に汽車に乗り合わせた「私」と「小娘」がいますね。なんとなく、座席は4人で座る対面式のボックス型を想像して読んでいたが、これを当時の横須賀線の鉄道を調べた人がいて、じつはロングシート型の車両だったというのだ。すると、まるでシチュエーションが変わってくるのだ。「坊っちゃん」の赤シャツを、映画の影響で、なんとなく洋服だと思っているようなもので、あれも和服なのだ。先入観がときに読解を誤らせることがある。「蜜柑」に「私」の外に作者の視点があることを指摘したのも鮮やかでした。飯田橋「ブ」は半額新書に出たばかりのものがずいぶん並んでいた。『天才 勝新太郎』ももう並んでいたし。

「スムース13号」晶文社特集号は意外に早くできあがって、2月7日には、先行して京都「古書 善行堂」で発売されるみたいです。関西の方で、一日でも早く,という方は駆けつけてください。
http://d.hatena.ne.jp/zenkoh/20100129#c