冬の日あれこれ

okatake2010-01-13

昨日とはうってかわって蒼空が広がる天気。ただし風は強い。「ブックジャパン」用に辻原登の新刊『抱擁』新潮社を読み、原稿を書き始める。
何気なく金原亭伯楽『小説 古今亭志ん朝』(本阿弥書店)を読み始めたらおもしろく、速読でだが読了。結婚前に、ひいき筋の右翼の大物の愛人と恋に落ち、結婚を考えるが彼女は自殺。結婚してからも日航寄席で一年に一度パリへ行ったとき、やはり同衾する女性がいた、なんて話が書かれてある。伯楽は馬生の弟子。志ん朝とはつねに近しい間柄だったという。しかし、この小説、普通にうまいもんです。見た筈のないことを見てきたように書く腕はたいしたもの。いちばんおもしろかったのは、三木のり平をいかに志ん朝が心酔しきっていたか、をエピソードを交えて書いたところ。「随所にのり平から教えられた演出法を落語に取り入れ、志ん朝落語を確立している」という。馬生の最後を書いたシーンもいい。手術をすれば声帯を失うガンと告げられ、きっぱり手術をあきらめ、死を覚悟に高座へ上がり続ける。点滴を受けよの指示に「いや、あたしには酒がありますから」と一切医師の手を借りず、畳の上で死ぬ。まだ54歳だった。この馬生に憧れて、落語家になることを決心したのが志らくだ。馬生の葬式に、尻が破れた学生服かなにかで香典も持たずに駆けつけ、正直に受付でそのことを言うと、「いいやな、若い人が来てくださって、仏も喜ぶだろう」と入れてくれたのが柳朝だった、と枕で話していたのを二度、聞いたことがある。正確ではありませんよ。引用はしないでください。
「文學ト云フ事」を観たおかげで、ひさしぶりに川端康成「みずうみ」を読む。意識の流れによるストーカー小説ともいうべきで、異様な傑作だ。読んで損はないですよ。
サン毎の短いコラムで、ようやく上山元市渡欧アルバムについて書く。
書き下ろしを含む単行本の仕事が全く進まない。今週、まだいくつか重いの軽いの含めて締め切りがあり、来週、なんとか、とりあえず着手したい。今年もあと350日ほどだもの。