古本初買い出し

okatake2010-01-10

昨日は、高円寺即売会、都丸、ささま、音羽館、興居島屋と流れていく。それぞれの駅周辺には、ほかにも古本屋さんがあるのだが、なんせ、体力がなくて、とてもまわれない。行くところが限られてしまう。
初買い出しとあって、20冊ぐらい買った。それでも5000円くらいだろう。即売会では、安ければ買う集英社おもしろ漫画文庫『一丁目一番地』が、よく見ると、4、5ページズタズタに切れているが750円。雰囲気がわかればいいと買う。もう本が増えるだけだから、めったに手を出さない昭和初年平凡社の円本、現代大衆文学全集の「新進作家集」を土間均一で150円。新進とはだれぞや、となかを見ると林不忘、木下宇陀児、角田喜久雄城昌幸などなど。いいメンツだ。挿絵も山名文夫竹中英太郎など。久山秀子「チンピラ探偵」というのもそそられる。
会場で魚雷くんに挨拶され、いっしょにコーヒーを飲みながら情報交換。もと晶文社の宮里くんが「本の雑誌社」へ入ったこと、よかったなあ、と喜び合う。単行本を作っていくらしい。
都丸でも数冊買ったが、佐々木康『悔いなしカチンコ人生』が100円で。時代劇から現代劇、それにテレビドラマと縦横無尽に活躍した職人監督の回想。しかし、気の毒になるほど装幀がチャチ。モノクロの映画の写真に、太い明朝でタイトルを打ったほうが、つまり何もしないほうがよほどいい好例。それで古書価も違ってくるはず。
「ささま」でも店内店外含め数冊。非売品の三菱鉛筆の社史『鉛筆とともに80年』がお買い得。三菱鉛筆の創業は、いまの新宿御苑のすぐ側で、水車が廻っていたという。その写真もあるが、とても山手線内とは思えない。
音羽館でも均一数冊と内田裕也『俺はロッキンローラー』廣済堂文庫350円。こんなの、文庫で出てたこと、知らなかった。内田裕也はその存在館のわりに著作が少なく、むかし出た対談集は持っているが、1976年元版のこれは初めて見る。元版のデザインをそのまま活かしたカバーがいかしてる。吉田豪の解説を読むと、聞き書き構成をしたのは高平哲郎。これは持ってないと。
広瀬くんと挨拶し、「赤レンガ」でお茶。同姓同名が話題となる。西荻ブックマーク「私は古本ストーカー 田村さんとハルミンさん」もすでに25人の予約が入っているという。満席間近。昨年末の都筑饗一さんのトークで、都筑さんが影響を受けた写真集で、質屋に預けた絵ばかりを撮ったのがあるらしい。こないだ観た「黄色い涙」でも、質屋へ絵を預けて大金をせしめる話があり、かつて伊丹十三がアンディウォホールのリトを質屋へ持ち込み、「印刷だから」とか渋る親父に、いやこれはリトと言って、と現代芸術を解説するのがあったと思い出す。
古本業界の季節労働者のような李さんと、均一前で立ち話。ぼくが何気なく聞いたことを、うーんと手をとめて真剣にいちいち答える姿勢が好ましい。音羽館の天野くんも、今年中の独立めざして奮闘中。ほんとうにぼくに湯水のごとく使える金があったら、意欲ある古本屋開業希望者に出資したい、と思うくらいだ。ローンやら借金やらで、自分の明日さえ危ない身の上ではどうしようもない。がんばれ、と言うしかない。
興居島屋では作業中の澄ちゃんとまた喋る。こうやって、取材みたいな古本屋巡りになってしまう。1956年版「鉄道クイズ」という中とじの雑誌みたいな本があり、これを400円。ブルー・コメッツ特集の平凡歌本を300円で買う。
夜、CSで山田太一脚本「ながらえば」を見て感動する。笠智衆宇野重吉の演技合戦あり。高山本線の「猪谷」という駅が出てくるが、木造の駅舎でいい感じ。いちど、訪れてみたい。