長い一日

okatake2009-09-19

昨日は五反田に始まる。10数冊を買う。岩波写真文庫奈良の大仏」は、ちょうど大仏造営の話を書いた『国銅』を読んでいるところなので。ほとんどが200円。カメラを持参したので、下の均一風景を撮る。近くに金光教だったかの、古い木造家屋があったが、壊されて、ビルになるようだ。
五反田駅前の喫茶店で、『あなたより貧乏な人』再校直しをNくんに渡す。QBBのイラストも見せてもらった。稲垣足穂など、似顔を使った傑作ぞろい。原画が欲しくなった。10月16日発売、と決まる。月末には「コクテイル」で出版記念トークをします。詳細は追って。
今夕、新宿のシネコンでラテンビート映画祭を見るつもりでいたので、それまで時間つぶし。とりあえず神保町へ出て「和洋会」を覗き、一冊、関東大震災後の復興東京をルポした傑作小冊子を1000円で見つけ、手に持っていたが、気がついたら手から離れて、ない。あわてて、あちこち探すが見つからない。まるで老人だ。
コースとなっている御茶ノ水「デ」へ寄ると、500円CDが5枚で1000円セールをやっていた。オスカー・ピーターソンがトリオで弾き語り(ピーターソンは歌がうまい!)をした「ロマンス」、ソニー・ロリンズがたくさん出ていて、「WORKTIME」「TENOR MADNESS」、キャノンボール・アダレイミルト・ジャクソンと組んだ「THINGUSU ARE GETTING BETTER」、ウェス・モンゴメリー「MOVIN`ALONG」を買う。いいのが、一枚200円で買えてゴキゲン。そうかだ、ひさしぶりに四ッ谷「いーぐる」でジャズを聞こうと思い立ち、四ッ谷へ移動。2時間、たっぷりジャズを浴びて、帚木蓬生『国銅』を読了。「いーぐる」もコーヒーが650円に値上がりしていた。前は550円だったかなあ。
重い荷物を抱えて東奔西走。もと東映会館だった場所に、見上げるようなモダンビルが建っている。9階までエレエーター、そこからエスカレーターで各階がシネコン「バルト9」になっている。「ギンレイ」の客層とはまた違い、業界っぽいのと、外国人の姿がちらほら。降りてきたエレベーターからアラーキーが出てきた。「あ、アラーキー!」と小さく唇を動かす。惜しいことをした、と思ったのは、この日五反田で写真全集『顔写」を買って持っていたんだ。サインしてもらえればよかった。
9階からガラス越しに新宿の夜景を見ながら、エスカレーターに乗っていると、近未来都市にまぎれこんだ旧人類みたい。この夜観た「よそ者」はヘンテコな映画だったなあ。ナタでぶった切ったような映画というか、冒頭の延々長回しで、画面奥からだんだん近づいてくる二つの人影のシーンから、これは普通の映画とはちょいと違いますよという気にさせられる。アメリカに流入した、日雇いのメキシコ人を描いているのだが、とにかくセリフが少なく、画面で見せていく。途中、何度か「わあ!」と声が出そうなシーンがあり、ラストも秀逸。なんと評していいかわからないが、新しい映画だと思った。エンディングのタイトルロールも、音楽というより、間断する大音響が流れ、あくまで観客の心を乱して終りたいらしい。明るくなって、チケットをくれたFくんが、客席にいたので地上まで少しコトバを交わす。Fくんにチケットをもらわなければ、ぜったい観ることがなかったような映画で、来てよかった。
このまま帰りたくないショックをぶらさげて、コクテイルで呑む。知り合いがたくさん。新古本屋情報もあるのだが、それはまた。
辻原登『花はさくら木』朝日文庫吉田篤弘『圏外へ』小学館、をいただきました。受贈書、きちんと紹介できなくてすいません。