影の領域

9月20日(日)西荻ブックマークは、ゆたか・せんさんが、開高健について語ります。16時半から「こけし屋」別館。
くわしくは以下を。
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11日、昼神保町。「趣味会」を覗き、昼飯を食べながら、MFの永井くんに『あなたより貧乏な人』の初校を戻す。10月半ばには書店に並びそう。
サン毎で仕事をして、ひさしぶりに「ギンレイ」ショーン・ペンが実在のゲイで政治家となった男を演じた「ミルク」を見る。60年代末から70年にかけての、現実の粒子の荒いフィルムを折り混ぜながら、ゲイパワーへの迫害と反逆を描く。
夜、日本橋会館で「柳家三三」の独演会。東西線茅場町へ。そこから歩く。日本橋川を渡った対岸のエリア、浜町、水天宮、人形町など、江戸の名残を残す町は、ふだん、めったに足を踏み入れないので新鮮だ。
ネギさん、晩鮭亭さん、ぼくというのは、昨年クリスマスイブに、細野晴臣アン・サリーライブの特等席を4席確保しながら、残り一席をムダにしたトリオ。今回も危うかったが、ネギさんが片野「愛犬王」ゆかさんを誘って、なんとか席は埋まる。日本橋会館の4Fホールは、まだ新しく、椅子も木を基調にしたいいホール。400席強がほぼ満席。三三には、すでに多くのひいきがついている由。柳亭市江がまず高座に上がったが、二つ目になったばかりで初々しい。しかし、「家ほめ」は、ちょっと聞いたことがないような無惨な出来。緊張しているせいか、まずコトバがちゃんと聞き取れないのが致命的で、コトバの間違いがくすぐりになるような噺なので、これはいいところがまるでなかった。
代わって三三は、すでに落ち着きがあり、客席の空気をつかんでいる。人間の魂が外に出て入れ替わるという変わった噺をして引っ込んだが、中入りに入ったところで、また出てきて「いまのでは納得しないでしょう」と、別の話を一本きっちりやった。大岡裁きのたくさんあるバリエーションの一つ。中入りで休憩に行った客もあわてて戻る。こういうことも珍しい。
トリは連続で口演している「牡丹燈籠」の第三、「栗橋宿」。一時間たっぷり、怪談の形式を借り、人間の弱さ、愚かさを描き込んだ名作を演じた。ケチをつけるとすれば、30半ばにして、芸がきれいにまとまりすぎている、ということだけで、これから年齢を重ねるごとに変貌していくだろう。
終って、片野ゆかさんをゲストに、振られトリオで呑みにいく。また「ブ」の話だ。
12日、家で時事通信、書評の仕事。藤山新太郎『手妻のはなし』新潮新書。13日、西部古書会館「均一祭」2日目。100円。「あった、あった。」のネタ切れで、そういう目でホンを探す。臼井吉見『事故のてんまつ』は意外に見ない一冊。1973年「FM fan」も、エアチェックの時代、としてネタにできそう。11冊を買う。会場で会った石原くんと、いつも行く中華で昼食とりながら雑談。このあと、中野に移動。コンタックスを譲ってもらったカメラマンのMさんに、いろいろ相談。Mさんも、いまだ銀塩で仕事をしている。ちょっと、この秋、カメラをぶらさげて、東京を散歩しようと思っている。
サン毎インタビュー原稿書き上げ、CSで「男たちの旅路」第四部「影の領域」を見る。いったい、何回見れば気がすむのか。小樽から連れ戻された吉岡(鶴田浩二)は、平の警備員として働いている。小樽からくっついてきた兄妹、清水健太郎と岸本加世子も警備会社に入社。柴俊夫に、吉岡(鶴田)がどんなにすごい人か吹き込まれるが、復帰した吉岡は元気なく、とてもそんなにすごい人とは思えない。むしろ、上司であり、キビキビと指導しながら優しいところもある磯田(梅宮辰夫)のほうに引かれる二人。もどかしい柴俊夫。そこに、梅宮が管轄する港の倉庫で不正があり、それを清水が見てしまう。梅宮は清水を説得し、わりきれないながら「世の中、そんなものだ」と納得する清水。しかし、それを聞いた岸本は、大人の汚い面を許せなく、社長(池部良)に直訴するが、「見なかったことにしろ」と言われる。
そこで鶴田が登場。「悪いことは悪いことだ。それをうやむやにしてはいかん」と、兄妹を連れて、社長室に乗り込む。このシーン、道を行く三人に、柴俊夫が途中から頭を下げて加わる。つまり、往年のやくざ映画の殴り込みシーンのパターンだ。鶴田はやくざ映画のスターだったから、30年前、この「影の領域」を見ていた視聴者の多くは、やくざ映画を想起したはずだ。
今夜は爪を切って寝ます。