「のらぼう」の一夜

okatake2009-08-06

昨日午後、「貧乏本」の担当者、MFのNくん来訪。MFNだ。原稿の構成と、これからの打ち合わせ。なんとか8月中に入稿。先が見えてきた。とにかく、年内になんとか数冊出さないと、税金や保険料が払えない。小林信彦『〈後期高齢者〉の生活と意見』の、自由業の不「自由」さを書いた文章を思い出す。50代に一つギアを上げないと、60代は坂を下っていくことになりそうだ。
MFNくん見送り、雑事をこなし、トートバックいっぱいに本を詰めて、西荻へ。夜、「栞会」有志で「のらぼう」を食す会があり、その飲み代稼ぎに音羽館へ本を売る。これがちょうど、「のらぼう」と二次会の飲み代とほぼチャラ。いつも高く買ってくれるので、こうなる。「ブ」へ売ったら2000円いかないだろう。100圴で、みなもと太郎『漫画の名セリフ』、石ノ森章太郎『漫画超進化論』とマンガ関連本2冊、とあと一冊は「漫画読本」の1961年新春号を。金語楼が「私の発明狂時代」を書いている。『漫画超進化論』の藤子不二雄Aとの対談で、『オバケのQ太郎』書評を書くヒントがあった。そういえば、この日の朝日夕刊で、石飛徳樹さんが「謎めく『Q』、不思議な力』と題して、「1Q84」「ウルトラQ」「オバケのQ太郎」などのタイトルに使われた「Q」の字の謎を解読している。いま話題の「エヴァンゲリオン」の第三部も「Q」になるらしい。石飛さんは触れていないが、かつて「カルトQ」というクイズ番組もあり、やはりこれは「クイズ」「クエスチョン」の頭文字が「Q」であることも大きいでしょう。
「のらぼう」は奥に座敷ができて、ここに17名がぎゅうぎゅう詰めで入る。あとで聞いたら、「のらぼう」始まって以来のレコードだったらしい。この集まり、テーマも展望もなく、ただバラバラに喋っているだけだが、そこにいることが心地よい。澄ちゃんが元気そうで一安心。この夜のコースは、おからのサラダ、鰹の土佐たたき、冬瓜の鶏そぼろ餡かけ、おじゃがと若布のかき揚げ、地蛸と胡瓜の酢のもの、寄せ豆腐の揚げ出し、地野菜とお豆腐のサラダ、土鍋ごはん。野菜を中心とした、素材を活かした味付けで、どれもおいしゅうございました。それぞれの量は小皿に取れる程度だが、ぜんぶ食べたらけっこうお腹が膨れた。それに肉や油をあんまり使っていないから、胃にもたれない。ビールがまた旨かった。これで一人6000円
まあ、たまにはね、こういうものも。
平田俊子さんから送ってもらった『私の赤くて柔らかな部分』(角川書店)を電車で読み始めたら、こないだ行った「イメージフォーラム」あたりが舞台として出てきて、主人公の女性の不機嫌ぶりがおもしろく、やがてそれがこの小説のテーマの核心を巡り出す書き方で、あっというまに引き込まれる。詩人らしい表現もあちこちに散見できて、ううむと思う。これはどこかに紹介したいな。造本装幀もきれい。