葉山で初ゼミ

okatake2009-07-13

昨日、葉山で初ゼミを聞いた。「サンデー毎日」著者インタビューで、奥成達さん(『宮澤賢治、ジャズに出会う』白水社)に取材。現代詩、ジャズ評論、「東京25時」「小説マガジン」、山下洋輔全冷中タモリ赤塚不二夫本のゴースト、数々のいたずらもの新書など、多面性のある書き手として活躍されてきた。「gui」という同人誌も30年も続けていらっしゃる。食道ガンの手術後、声も出ない状態で取材は難しいかもと、担当編集者に言われたが、ぼくのことを知ってくださっていたみたいで、歓迎してくださった。
取材が終り、葉山の文化人たちの集まりが、海辺の海の家であるというので、誘われて同行する。体調が悪く、めったに外出しないという奥成さんに、夫人で画家のながたはるみさんがつきそって、裏山と石垣のあるひっそりとした路地をあるく。その途中、セミの声が。ながたさんが「セミの脱皮というのをこないだ初めて見たの」と。呻吟しながら前を歩く奥成さんの後から、ながたさんと喋りながら歩く。こうしていることが初めてのような気がしない。不思議な気分だった。「東京では、道にひからびたみみずがへばりついているのも、見ないですよ」とぼくが言うと、しばらく行くと、道にみみずが。「あら、みみずよ」とながたさんが声を挙げる。仕組まれたような、みみずだった。
浜に出ると、ヨットが浮かび、もう泳いでいる人たちがいる。パラソルをたてて、日に焼く水着姿の女性も。もと「マガジンハウス」編集者の吉田仁さん、作家の森詠さんとお嬢さん、徳間の編集者国田昌子さんなどに紹介される。次々とホタテや、サラダが運ばれて、ビールを空けていく。初対面の人たちと話すのが苦手なぼくだが、それでも、潮風をうけ、波を見ながら、心がほどけていく。この日のことは、落ち着いたら、もっと長く、どこかに書いておきたい。すべて書き残しておきたいという半日だった。葉山はいい。
3時過ぎに一人だけ、失礼して帰途へ。帰りは行きと違うバスのルート。海沿いを走るバス。奥成さんにもらった、吉田仁さんの『葉山日記』(かまくら春秋社)を読んでいたら、毎日のように、奥成さんの名前が出てくる。人と会い、酒場で酔い、映画や芝居を見て、ホンを読む、吉田さんの現役時代の日記の集成。そして次々と倒れていく友人たち。毎晩が「終電」で、「終電日記」と言い換えてもいいぐらい。これがおもしろかった。
これを読んでいたら、吉田さんと話したいことがもっとあったのに、と後悔する。「大塚まさじ」が奥成さんの隣人として、これもたびたび登場。これも、ああ、しまった、と思う。
金、土、日と朝から家を空け、深夜に帰宅するという日々。外男だった。今週はちょっと家男となって、仕事をあれこれ片付けなくては。
今夕、森本毅郎スタンバイ!5000回記念パーティがあり、顔を出しておかなくてはならないのだが、とても行けそうにない。
「デ」で、大塚まさじを捜したがなくて、西岡恭蔵『フェアウェル・ソング』、レッド・ガーランドトリオを買う。