週末あれこれ

okatake2009-07-11

昨日は長い一日。午前、むっとするような湿気が空気を膨らませて、空が重い。これは雨だと、傘を持っていったが、一度もささず。なぜかぼくが傘を持って出ると雨が降らない。そうなると、ちょっとぐらい降れよ、とやっぱりちょっと思ってしまいますね。
朝、あわててゲラを返し、一本原稿を書いて、「彷書月刊」連載が今回は写真がないので、イラスト地図を書く。函館。
宮澤賢治、ジャズに出会う』を読みながら御茶ノ水へ。昨日、CSで大映版「自由学校」を見たところだ。戦後まもない御茶ノ水(映画では御金ノ水)周辺が出てくる。五百助と駒子が暮らす、農村のような風景がある最寄り駅が「武蔵間駅」と読める。これも架空の駅で、じっさいは東武東上線「下赤塚」駅でロケされたという。「下赤塚」へ行きたくなってきた。
「愛書会」を覗く。あれこれゴソゴソ買うが、いちばんの買物は寺田瑛『東京不連続線』昭和23年、1000円。仙花紙本なり。都会生活の哀感、風俗、お色気話を「不連続線」の名のもと、コントを書き続けた寺田の戦後篇。エロ色が強い。高田宏『猪谷六合雄』リブロポート300円は持ってただろうか、まあ買おう。コミガレで物色。2冊拾ったところで、あと1冊がなかなか。ちょうどアホアホ中嶋くんが、「岡崎さん、ぼく1冊買ったのですが、よかったらいっしょに」というので、これで3冊にして買う。中嶋くんとは「愛書会」でも会ったし、この夜の飲み会でもまた。「3回目ですね」と言われる。
サンデー毎日を終え、「ギンレイ」へ。このところ、さぼり気味で、前回分もパスしていた。この日、ラストで1本だけ「ロルカの祈り」(ダルデンヌ兄弟監督)を観る。最初、物語の背後の事情がわからず、同じ部屋に住む男女が、夫婦と思ったらそうじゃないらしく、ただ画面の流れだけを追う。右斜め前のおじいさんは、耐え切れず30分ほどで席を立つ。舞台はベルギー。他国からの移民が長期滞在するため、偽装結婚し居住権を得る。それを仲立ちするブローカーがいて、ロルナは、妻役をすることで金を得ている。拳銃も爆発もなく、カーチェイスもない、ある意味で愛のサスペンス映画と言えるだろう。表情をまったく変えないロルカ役のアルタ・ドブロシ(だろうな)が不思議な魅力。
夜は中央線で飲み会。車中、ちくま文庫漱石『明暗』を読む。少し前に水村早苗『続明暗』も、同じちくま文庫から再刊され、なぜだか勘違いして、その『続明暗』を読んでいるつもりで、読み始め、しかし、よくこれだけ漱石の用語と文体、世界を水村は写し取ったものだなあ、と感心していたら、本家の漱石の方だと気づき、ひそかに車中で顔を赤らめる。
飲み会には、昭和の終りギリギリと平成元年生まれの20歳、19歳コンビが来ていて、じゅうぶん娘の歳であることに愕然とする。ネギさんが「志の輔独演会」の切符を取ったというので、一枚譲ってもらう。
泥の流れのように過ぎていく一週間だった。