ちょうどアジサイの季節だった

昨日、国立「デ」で、ポール・チェンバースクインテットと、ジュニアマンス・トリオのビレバンのライブを買う。
ヨムヨム11」に前号に引き続き、川本三郎さんが亡き恵子夫人の回想「君、ありし頃」を書いているが、これがまたいい。恵子さんが生涯忘れられない二つの旅、ロシアと台湾。後者は川本三郎さんとの二人旅だった。フリーの生活のことも。何度か大学の先生の口がかかった。引き受ければ経済は安定する。しかし、川本さんは自由を選ぶ。奥さんも賛成してくれた。家計のことはすべて夫人まかせ。四十代の頃、先輩の評論家が病に倒れ、その闘病資金にと奉加帳が回された。このときの恵子さんの態度が毅然としていた。「こんなことをするなんて甘ったれているわ」と言うのだ。ここだけ読むと誤解を生むかもしれない。ぜひ、原文にあたっていただきたい。最後のところ、全文を引く。
「家内が亡くなったのは昨年の六月十七日。ちょうどアジサイの季節だった。葬儀をした堀の内の妙法寺の境内にアジサイがたくさん鮮やかな青い色を見せていたのが目に沁みた。
 アジサイが好きで、その季節に逝った家内のことを考え、お坊さんは、戒名に『紫文院」と「紫」を入れてくれた。
 このところ毎日の散歩には井の頭線の線路沿いを歩き、アジサイを眺めている」
なんだか、こういうこと言うと不謹慎だが、川本三郎さんの新境地とも言える文章に思えてくるのだった。
同誌の鉄道特集のページで知ったが、「のぞみ」の命名者は阿川佐和子さんだそうだ。
共同通信の書評、ジョン・ハーヴェイ『心霊写真』(青土社)を、苦労して書く。あまりに畑違いの本を引き受けるべきではないかもしれない。
TBSは南川三治郎『アトリエの巨匠に会いに行く』朝日新書の紹介原稿を書く。