ブックジャパン、そして上がり屋敷からウサギの話まで

okatake2009-06-08

「ブックジャパン」に書評がアップされています。http://bookjapan.jp/search/review/200906/okazaki_takeshi_01/review.html
よかったら、ごらんください。

まるで夏の日のような日曜日、正午に外出。高円寺即売会。ここ二回ほどボウズだったので、今日は買う、と決める。木崎国嘉『女のあくび』350円は、下半身に特化した医師エッセイ、と言えば古本者にはジャンルとしてわかるだろう。木崎は「11PM」大阪版によく出ていた医者だ。『続編仁鶴の頭のマッサージ』は持っているが200円だから。筑摩の高校国語教科書が100円で出ていて買う。太宰治「清貧譚」が掲載されていて、最後に自習用の設問が。ここが「太宰本」を書くのに参考になる。講談社の少年少女向け世界名作全集『ジャンヌ・ダルク』には、クリスマスカードがはさんであった。母から娘へ、この本を贈る文面が書かれている。これが傑作。杉本秀太郎『洛中通信』岩波500円。館内で魚雷くんとばったり会い、これから目白「上がり屋敷」で、わめぞプレゼンツのトークショーへ、というから、それならぼくも一緒だ。一緒に行こう、となる。
上がり屋敷のトークは、塩山VS武藤、以来。今月の仙台でのブックフェア「6月の仙台は本の月」の宣伝に、火星の庭の前野さん、ジュンクのジュンちゃんが上京。向井くんの進行(うまい!)ナンダロウくんがからみ、一箱古本市を含め、古本を使った新しい動きについて話す。くわしくは、書肆紅屋さんが録音、メモをとっていたので、完全にアップしてくれるはず。
ちょいと印象に残ったことを。向井くんと近しくなったのが、2004年2月に三省堂神保町本店でやった「岡崎武志古書遊覧」というイベントあたりだとわかった。その前、2002年10月にリブロ池袋と青山店で、スムースのメンバーと旧姓荒木さんが組んで、「本屋さんでお散歩」展というイベントをやって、合わせてナンダロウくん編集の小冊子を作った。この日配られた「本のイベント関連年表」では、これが最初になっている。早稲田の古本屋街で古本屋「古書現世」を営む、二代目の向井くんは、古本もしくは古本屋の将来に危惧を抱いていて、こうした一連の流れに注目し、賛同し、自ら「外市」「わめぞ」と動き出した。向井くん曰く、向井くんがこの古本屋業界に参入した1990年代、業界は保守化し、しかも本が売れなくなっていくジレンマにあった。そのころ、もうこれからは目録で行くしかない、という声が多く、それはやがて即売会や古本市、ネットと移行していくが、もうその先がない。それは足場を移しているだけなんだ、と向井くんは言っていた。ほんとうに客観的に状況がよく見えている若者だったんだ。
一箱古本市」の創始者でオルガナイザーのナンダロウくんのもとには、一人歩きした「一箱古本市」について、相談が寄せられるようになったが、見当違いのものもあったという。最初に、「やりたい!」と他府県で相談してきたのが、仙台の前野さんだった。古本の新しい流れというなかで、ぼくの名前も何度か出してもらったが、どうやら1990年末あたりから、同時多発的に、旧世界への異議申し立てとして、カジュアルな古本への接近(それも素人参加型の)が勃発してきた。
この2時間足らずの話は、ぼく自身、あらためてちゃんと整理して考えるべきことを、そのポイントをうまく提出してくれた感じで、たいへん勉強になった。
「本の力」が衰退していく、という言説が支配的ななか、それはそうだけれど、村上春樹バカ売れというのとは違う、古本ぐるみの「本」の世界の揺り起こしがあって、それを町おこしにしたいという人たちが増えていること、非常に力づけられた。ほんとうは、出版界の人、取次、書店の人たちにも、聞いてもらいたいような話だった。

会場にスタッフを残し、「だいこんの会」メンバーで池袋でお茶。丸井裏の打ち上げ会場へ行くと、もうみんなガンガン呑んでいた。あわてて、「だいこんの会」連も乾杯。そこへ「ぐるり」の五十嵐くんが現れる。京都で豊田ユウゾウのライブがあり、それを見てきた帰りだという。
一箱古本市にも参加している松本典子さんという女の子(だと思ったら、立派な大人で既婚者だった)が、ウサギの本を集め、ウサギを飼い、ウサギの写真を撮っているというのであれこれ話を聞く。ふつうの集まりでは、なかなかこういう人には会えません。話を聞いているうちに、松本さんの耳が伸び、ほんとうにウサギみたいに見えてくるのだった。その横では、ビールとコーラとパンのみで生きるという、ジュンジュンが、キラキラ輝きながら生ビールをぐいぐい空けていた。
向こうの島では、ハルミンさんがまた美貌を裏切るすっとこどっこい話で、ドカンドカンと沸かせ、その近くで、前野さんがギャハハと笑いながら、泳ぐように呑み続けている。まったく、学生のコンパより騒がしいのが「わめぞ」の打ち上げ。
帰宅して翌朝、日曜日に娘が通う塾で模試があり、国語の問題で、兵庫県で使われた「読書の腕前」からの出題が、そのまま問題として出たという。娘曰く、試験中は我慢したが、終ったら「わはははは」と笑いがこみあげた、という。