ちょっと長い昨日のこと

okatake2009-02-07

昨日は長い一日。まずは正午過ぎに東京古書会館「書窓展」。あんまり時間ない、「あきつ」「克」「みはる」を中心に。買ったのは、けっきょく「あきつ」のみ、になった。もう「あきつ」ったら。
写真で横撮りした4点。加藤周一『抵抗の文學』岩波新書は昭和26年初版、300円。第二次大戦下のフランスのレジスタンス文学を論じる、加藤周一30過ぎの著作。この時代の、古びた岩波新書は、寂びたいい味わいがある。『航空少年読本』はアルス新日本少年読本の一冊で昭和14年刊。国策本で、少年たちに、空への憧れを、お国のために、という内容になっている。「軍航空が多大の犠牲を払って開拓した空の平和郷に、どしどし航空施設を立てて皇国日本の威光を双翼に載せ、海外に突進すべき暁です」なんて書かれてある。函無しで状態も悪いが、よければとてもぼくなんかが買えないような値段になると思う。ありさか小象『象のあくび』大正14年実業之日本社、500円は、自著に取り上げたことのある一冊。あんまり可愛らしい本で、かつてクラフトエヴィング商會さんに取材で会ったとき、見せたら、気にいられたのでプレゼントしたのだった。また、昨日実物を見たら、あんまりいいので、また買った。そうそう、クラフト・エヴィングさんの「装幀」展が2月12日から24日まで、新宿「紀伊国屋画廊」で開かれます。無料です。これは馳せ参じるつもり。アンドレ・ジイド『ソヴエト旅行記』昭和12年第一書房、200円は古書展ではわりあいよく見る。これはもう本のたたずまいに200円。
タテキンを通り過ぎる一瞬に「ユリイカ ケストナー特集」を見つけ、さっとお金を払ってサンデー毎日へ。「ケストナー」には、ごひいきの二人、今江祥智川本三郎両氏が対談を。そういえば、川本三郎さんの対談集なんて、長らく出ていないが、川本さんの関心は、ぼくの知的欲求を刺激し、満たすもので、これはなんとか、まとめて読みたいものだ。
サンデー編集部で、Iさんから、芥川賞受賞作,津村記久子『ポトスライムの舟』の書評、誰がいいだろうと相談を受け、「これはもう、魚雷くんでしょう」と。さっそく一階上で仕事をしている魚雷くんに連絡がいき、当人が本を取りに来る。少し距離をおき、照れくさそうに「読みたいと思ってたんです」と魚雷君。帰ったあとで、Iさん、「魚雷くん、わたしのこと、怖いのかしら」とぼつり。悪いが笑ってしまう。
サンデー終え、「ギンレイ」へ。一回、すっとばしたので一カ月ぶり。ショーン・ペンイントゥ・ザ・ワイルド」、ターセム落下の王国」を見る。まったく傾向の違う二作品をいちおう楽しんだが、前者はちょっと長い。少し寝てしまった。後者の上映では立ち見、階段に座って見る人が出たが、エンドロールで流れた音楽のとき、隣りに座布団を敷いて座った老人が、ずっと口笛で音楽に合わせて吹いていたのが、なんだか映画を見たよりよかった。こんなおじいさんになりたいものだ。
このあと「コクテイル」へ。ちょうどハルミンさんの本ができて、晶文社の宮里くん、魚雷くんがハルミンさんを囲んで飲んでて、それに合流。魚雷くん、ハルミンさんが名古屋の話を始めて、これで澄ちゃんが来れば、ナゴヤ話で盛り上がるのに、と言ってると、澄ちゃん登場。そのあと、カメラマンの鈴木くん、画家のオーライタロー両夫妻も登場し、いっきょにぎやかな夜に。
あずま通りにできた「古楽房(コラボ)」へも寄る。均一が充実。本多秋五『物語戦後文学史 完結編』新潮社を拾う。店内は雑誌があふれんばかりに並んでいて、これは一カ月ごとに、並べる本を変えるみたい。東京人、太陽など、みんな200円、300円の均一で安い。店番の白シャツ王子くんに聞くと、次回は映画本特集、ということで楽しみ。DVDの棚からフィリップ・カウフマン「ヘンリー&ジューン」を500円で。ヘンリー・ミラー、ジューン、それにアナイス・ニンが三つどもえで、1930年代パリを転げ回る。この映画、ぼくが最初に入った編集部で、映画のページを受け持っていたとき、試写で見た一作。感慨深いものがある。