扶桑書房一人展の熱気、だいこんの会

okatake2008-12-24

なんだか4時半ごろ目覚めてしまい、もうこうなると眠れない。この時期にきつい、津島佑子の純文学長編、上下巻『あまりに野蛮な』講談社が、締め切りまぎわにきて、まだ「上」が読み終わっていない。まだ暗い部屋のなかで、読み継ぐ。朝食をとって二度寝。起きたら昼で、家内と「甚兵衛」へ京ふう鍋うどん(すごい量)を食べに。帰り、車から途中下ろしてもらい、家まで歩く。朝、厳しい寒さだったが、陽があがると和らいでいい日和。下校の小学生たちを何人か追い越す。一人で石蹴りしながら歩いていた女の子が前にいて、ぼくが近づくと、立ち止り、ぱっと振り返り「こんにちは」と挨拶する。知らない子なので、驚いて挨拶を笑みとともに返す。しばらくいると、自転車に乗ってる。これも低学年の女の子がいて、これがまた、ぼくを見て「こんにちは」と言う。こちらも「こんにちは」。そこで思い当たった。この小学校では、おそらく犯罪抑止の指導として、知らない(怪しい、といってもいい)男の人が近づいたら、こちらから挨拶するようにしよう、と教えているんだ、と思う。それはいい考えで、たしかに、こちらから何かを仕掛けようと思っても、挨拶されるととまどうだろう。何か仕掛けなくても、挨拶されれば悪い気はしない。そんな冬の午後であった。
昨日は、神田古書会館で「扶桑書房一人展」。通常10店舗ぐらいで構成する古書即売会を、たった一店舗で開くというのだ。壁回りに本棚はいつも通りだが、中央はすべて棚をとっぱらい、ガラスケースが矩形に置かれて、ここは本当に高価ないい本が並んでいる。たすきがかかった本と、1000円以下ぐらいの安い本が壁まわりに。開始から少したってから入場したのだが、人垣ができて、みんな本を抱えて、後ろにいても割り込めない。ふだん、たすきのかかった本は見向きもしないぼくも、あんまりいい本が多くて、目移りし、二冊だけ買う。岩佐東一郎『詩集 航海術』昭和6、第一書房は箱なしだが、背革、天金のほれぼれする造本。本文用紙はまっさらのままで、活字の並びも美しい。2500円を迷わず抱える。佐藤春夫『評論随筆集 閑談半日』昭和9年白水社は、大判函入りで、本文用紙は和紙っぽく、袋とじになっている。函に日焼けありだが、1800円でこれも買う。それなりのいい本が買えてすっかりいい気分。入口のところに立っていた扶桑書房さんに挨拶され「岡崎さん、目録お送りしますから、住所お教えください」と。名刺をお渡しする。会場内では見知った顔とたくさん会った。
このあと、「ぶらじる」で青木正美さんに『古本屋群雄伝』ちくま文庫のインタビュー。「コミガレ」で、白石かずこアメリカン・ブラック・ジャーニー』、庄野潤三明夫と良二』、清水徹『都市の解剖学』など6冊を1000円で。谷川俊太郎『夜中に台所でぼくは君に話しかけたかった』は、今晩の「だいこんの会」のプレゼントに(そのほか、安野光雅絵はがき文庫2冊と、光文社文庫ハンコ)。
チケットショップで、300円ほど正規より安い青春18きっぷを買おうと思ったら、売り切れていた。こんなこと初めて。帰省に青春18を使う人が多いのではないか。不況がこんなところにまで。
「彷徨舎」編集部へお邪魔してよもやま話。編集ネコも大きくなった。
このあと西荻へ。「音羽館」均一で72年のライトミュージックを三冊。これは弟にやろう。広瀬くんと「赤レンガ」で来年春の西荻ブックマーク、「昔日の客」の夕べの話を。加藤周一が亡くなって、NHKで追悼番組をやっていたが、そこで『言葉と戦車』という加藤の本への言及があり、これを読もうと広瀬くんがネットにアクセスしたら、軒並み売れて、高いのしか残ってなかったという。テレビの影響は即反映する。古本屋さんもテレビを見なきゃ。
「だいこんの会」は、押し詰まって、しかも休日とあって、さすがに人が集まらないかと思ったら、いつもどおりのにぎわい。ピッポさんとわりあい長く、詩の話などを真面目にする。ピッポさんも来年のナゴヤブックマークに声がかかっているらしく、向こうで何か一緒にできえばいいなあ。プレゼント交換もし、二次会もほぼそのままの人数でなだれこむ。いつもは二つ席ぐらいに分かれるのが、この夜は混んでいて、一つ席に20人ぐらいが座る。詰め詰めもいいところで、アウシュビッツ収容所の食堂みたいになる。
車内ではずっと『明夫と良二』を読んでいた。心がほかほかしてくるんだ。
今夜はアン・サリーだ。