過ぎ行く暮らし

okatake2008-11-17

昨日、無事「西荻ブックマーク」企画「そこのみにて光輝く 佐藤泰志の小説世界」を終える。小さな会場は満杯。たくさんのお客さんに来ていただいてひと安心。サプライズなゲストは、佐藤泰志の長女・朝海さんで、しかも貴重な話をしっかりしていただいた。想像していたよりはるかに濃密で心暖かになるいい会で、司会進行をおおせつかったぼくが一番楽しんだぐらい。
作品集の解説者で佐藤の親友でもあった福間健二さん、同人誌仲間の木村和史さん、「共同通信」文芸記者の小山鉄郎さん、いずれも第一級といっていい、佐藤に関する証言をしてくださった。
朝海さんは、佐藤が自死した時、十二歳。「亡くなってほっとした」という正直な独白に、家族しか知り得ない、佐藤泰志の姿が垣間見えた。もちろん、家族を愛するいいお父さんの思い出もあり、遊園地などに連れていってもらったこと、サンタクロースがうちにもやってきて、それがなぜか傘やお皿など生活用品だったこと。同じものをスーパーで見つけ、サンタさんもここで買ったのかと思ったなど、微笑ましいエピソードをまじえつつ、酔っては暴れ、暴力を奮う姿。家の窓から出入りして、隣接するプレハブの仕事場へ向かう姿など、話してくださった。非常につらい内容だったと思うが、朝海さんはてらいも過度な感傷もなく、非常に明晰に順序よく、父・佐藤泰志の姿を回想された。その姿に感心し、感銘を受けた。
書肆紅屋さんがいてくれたら、もっと正確に、臨場感あふれる再現ができたろうが、録音はとってあるので、なんとか紙の上に再現して小冊子としてでも残せればいいのに、と考えた。
帰りの電車内での、小山さんの文壇裏話も、もったいないほどいい話ばかりだった。

今朝、四時半に目覚め、明け方までベッドで、芥川比呂志『憶えきれないせりふ』を読む。ここに蝶の話が出てきて、是枝裕和「歩いても歩いても」の蝶のシーンにひっかけて、教育雑誌のコラムを一本書く。同じ出版社の別の教育雑誌に、名言名セリフの原稿を送付。今週、また切羽詰まってきた。なんとか乗り越えないと。