黒木でございます

okatake2008-07-30

ぼく、NHKの回し者みたいに、ほめてばっかりいるけど、「わたしが子どもだったころ」の、京大卒のトランぺッター近藤等則の回が激しくおもしろかった。子ども時代の事が、再現ドラマになっているが、これがよくできているの。造船所の音、父親(鍛冶屋)の槌打つリズム、近所のアナーキーなおじさん(はだかでこい、けんかでこい、としのりこい、へそだしてこい、とラップではやし立てる)が、近藤の音楽の根源となっている。そして母親の優しさ。「お母さんの思い出は」と問われただけで、涙ぐんでいた。ドラマを見ているだけにもらい泣き。
今日は、4時ごろ目がさめて、TBSの原稿を書いて送る。朝食たべて二度寝。午後、下北沢へ。毎日の神保町ガイドの取材で、二日に分けて古本屋を巡る。今日は「ほん吉」「ビビビ」「ドラマ」へ。各店で必ず本を買うことを課し、10数冊を買う。いちばんの買物は、伊藤比呂美黒木香『性の構造』作品社1987年、これが1500円。それぐらいつけていい、珍しい本。「ドラマ」では、出ているの知らなかった阿部恭久詩集『恋よりふるい』思潮社を600円で。同タイトルの詩はなく、「二十世紀の思い出」という作品の一行。

 雨になった
 「今夜の、中華サラダのハルサメ」
 「変なの」
 それからぼくは鉛筆と/カメラであそんだ
 きみはむこうをむいて/アイロンにとりかかった
 われわれの
 恋よりふるい 
 春の宵


 まあ、こんな詩だ。
一緒に廻ったカメラのMくん、かつて「ヘミングウェイ」で一緒に仕事をした仲。「ビビビ」から「ドラマ」まで一時間の間があり、ひさしぶりにジャズ喫茶「マサコ」へ行こうと思い、Mくんを恐る恐るさそう。だって、ジャズに興味なかったら、不快な空間もしれないから。ところが、席について話しだしたら、じつは、Mくん、ぼくの数倍、ジャズにくわしい通だった。なあんだ。「マサコ」は、ふつうに音楽がかかっているレトロな喫茶店感覚で、若い客が訪れていた。40分ほどだが、アイスコーヒーに、昼食をたべそびれたため頼んだミックストーストをほうばりながらジャズを聞く。ここでひといきついた。もうこの歳になったら、一日3軒が限界だ。
明日はTBSを終えてから、下北沢二日目。
 「本の時間」に大阪弁の小説の変遷、を書くことになって、部屋中、整理しながら本を探す。それだけで披露困憊する。
野呂邦暢を顕彰する「諫早通信」とどく。『新・文學入門』の、野呂について言及した部分が、一ページで掲載されている。
東京新聞」の「大波小波」で、『新・文學入門』が好意的に紹介される。「アンソロジーこそ批評」というタイトル。署名は「きらら」。丸谷才一さんの影響を受けている書き手とお見受けした。「きらら」さん、ありがとう。「日刊ゲンダイ」でも「ベストセラー早読み」で、東京堂書店一位ということで、「本読み巧者2人の痛快文学談義」と題して、これも正確な紹介。また、産経新聞では、書評欄のベストセラー欄で、東京堂のランキングが掲載され、ちょうど『新・文學入門』が一位なため、掲載された。けっこう食いつきがいいなあ、うれしい。