行きたいねえ、紹興

okatake2008-07-23

連日、本を読み、書評を書き、ゲラを戻す。いまは、矢作俊彦傷だらけの天使講談社を読んでいる。あの「傷だらけの天使」のオサムが50代になり、ホームレスに。なんちゅうアイデアを、なんちゅう作家がしますねん、という作品だ。70年代、音楽、文学、映画その他すべてのジャンルをひっくるめて、一番かっこよかったのは「傷だらけの天使」のショーケンだった。その点では松田優作もかなわない、とぼくは勝手に思っている。
東京新聞」芸能本コラム3本目は、テレビ本について書くため、増田書店で、小川宏『司会者は見た』講談社+α文庫、阿久悠『テレビ、このやっかいな同居人』朝日文庫を買う。谷川書店で鉄道関係の本をあれこれ買う。ダイヤモンド社の新書、『京浜急行』『京王帝都』など。どちらも昭和43年の刊。これがしぶいの。
家に帰り、原稿を書こうとしたが、ナンシー関の著作が見当たらない。少なくとも7、8冊はあるはずだが。しかたなく、また車を出して立川栄「ブ」へ。ここでナンシー関を5冊買う。小田切誠『テレビのからくり』文春新書も参考に。和田誠『怖がる人々を作った人々』文藝春秋も。
彷書月刊」8月号は「特集・満州の雑誌メディア」。ぼくは米子行きの途中、倉敷「蟲文庫」さんに寄った話を。九品仏アンデス書房さんのあとに、「木鶏堂書店」が入ったようだ。九品仏には、上京してからすぐ、「なないろ文庫ふしぎ堂」を訪ねて以来、行っていない。そのころ、田村さんのことも知らなかったし、「彷書月刊」に連載を持つことになるとも思っていなかった。こんど、訪ねてみよう。
仙台「火星の庭」さんからは、いま開催中の「荻原魚雷、古本の森文学採集」のために作られた「古本の森、文学採集ノート」が送られてくる。これはシンプルな作りながら労作。300部限定、だそうだから、みんな急いで駆けつけてください。
こんなものかな。「ビッグイシュー」用に、山田太一『逃げていく街』新潮文庫(現在、元本のマガジンハウス社版のみ流通)を再々読している。これはもう、バイブルみたいなものでね。
なかでもとくに感心した一文「柯橋鎮(かきょうちん)」を読んで、あっと思う。これは中国の紹興を訪ねたときの話。紹興酒のあの「紹興」である。先日、わが愛する「世界ふれあい街歩き」でこの紹興が出てきて、めちゃくちゃ感動したのだ。運河のある古い町。自動販売機も看板も携帯電話ではなしている人もいない。車の影もなく、ようするに300年前と(衣服は違うが)あまり変わらない暮らしをしているように見えた。町並みも、信じがたいほど、昔のたたずまいを残している。なんというか、ただ、うっとりと眺めていた。これで、よけいに山田太一の文章が身にしみてきた。行きたいねえ、紹興
「裏通りに入ると、もう闇が立ちこめはじめていて、灯りのついた窓が遠目にもあたたかく、近づいてそれとなく目を向けると、裸電球ひとつの理髪店で、少年が老人に髪を刈られている。いい詩でも読んでいるように、満たされた気持で歩いた」
ほんと、こんな町なのよ。
あ、『昭和三十年代の匂い』が本屋に並び始めています。今日、「増田書店」にも平積みされていた。帯に写真があるのと、タイトルがシンプルだからけっこう目立つ、と自分では思った。知人、友人、関係者の方、発送がおくれています。もうちょっと待ってください。