ブリュッセル再訪

okatake2008-07-04

朝、BSで「世界ふれあい旅歩き」を見る。いま、テレビ番組で、もっとも優れたものの一つ。各都市をガイドする番組だが、レポーターはいない。レストランでも食べ物を口にしない。主格はカメラで、旅人の目となって、ただただ町をうろつく。ほんとはコーディネーターが、事前に取材先のアポを取っているのかもしれないが、まるで、いきあたりばったりみたいに、人々とふれあい、家にお邪魔したりする。音は、現実の現場の音と、音楽と、あとで入れた男優、女優のナレーションのみ。過剰、お下劣、作為、うるさい番組ばかりのなかで、野に咲く一本の野菊のように、清々しい番組だ。といっても、まだこれまでに10回ぐらいしか見てないが。
さあ、この朝はベルギー、ブリュッセル。ぼくは、2002年9月に、この地を訪れている(『古本極楽ガイド』所収)グランドセントラル駅から、表へ出て、というところから、もう身体が、6年前のことを思い出していた。そう、このままグラン・プラスへ続く道があって、そうそう、この路地、ここを抜けたら、一番高い尖塔をもつ市庁舎を始め、ぐるり、石の建物が囲んでいる。このあと、小便小僧のある噴水へ。ああ、この角にゴディバ、すぐ左に「タンタン」ショップがあった。エレベーターのある高台、ここも覚えている。蚤の市の開かれる広場、そうそう、ここだ。と、昨日のことのように、反応することに自分で驚く。さぞや印象的だったのだろう。それに、ほんとうによく何度も歩いて行き来したからねえ。町が身体になじんでしまった。じゅうぶん歩いて回れる町のサイズでもあったのだ。
6年は、もう遠いむかしのようだが、こうしてTVで見ると、昨日のことのように思い出される。いい旅でした。


 追いつめられた鹿は断崖から落ちる
 だが 人間が断崖から落ちるためには
 一篇の詩が必要だ
  (田村隆一「水銀が沈んだ日」)