潜水服は蝶の夢を見る

okatake2008-06-27

娘が交通事故に遭う夢を見て、朝5時ごろ飛び起きる。のろのろ朝食をたべて二度寝する。
昨日は「三省堂神保町本店」の『新・文學入門』フェアを見にいく。あ、もちろん今井舞が書いている「週刊文春」を買って電車で読む。4階人文書売り場のレジ前にある、一番目立つ陳列台(軍艦)に、まあなんと澄ちゃんデザインの手拭い、まねぎ、それに『新・文學入門』装丁原画などが飾ってある。すごくカラフルでポップ。そして二人の著作、古本の本、それに同著に出てきた関連本もずらり。もちろん二人が出した古本も段ボールの箱に入って売られている。
あ、ぼくと善行の縮尺8割ぐらいのひとがた立て看板も。やっぱり少しはずかしいや。大塚さんと少しおしゃべりし、一緒に昼食をたべにいく。あれこれ大塚さんと話すうちに高揚していく自分がある。石原さんが言った通り、ほんとうに本を出したことが「祭り」みたいになってきた。そこに各書店の書店員の方達が、多忙のなか、職責以上のことを、かなり無理してやってくれている。ありがたいことだ。
いったい『新・文學入門』が出てから、ぼくはなんど「ありがたい」という言葉を使ったことか。でも、そういう本なんだ。大塚さんと話して、小雨のなか相合い傘で三省堂へ戻るとき(Tくん、ごめん)、小声で恥ずかしそうに「じつは、わたし、今日が誕生日なんです」。ええっ! 昨日(25日)は山本の誕生日だったんだよ、と言うと、今度は大塚さんがええっ! 急いでフェアの売り場に戻り、ぼくの古本箱から、いちばんいいのを大塚さんにプレゼントする。これぐらい、なんでもないよ。 
(いま、産経の生田さんから電話。「すむーす」メンバーが、『新・文學入門』をとても喜んでくれました。ほんと「ありがたい」って、ほら、また出たでしょう。)
このあと、JPICへ移動。今週末、米子で紹介する本を持参する。ここでも尻を据えておしゃべり。ほんとうによく喋る男だなあ。
小雨のなか、しかしいい気分で、(いまかけているのはカルロス・ジョビンのベスト盤、ぴったり)飯田橋へ。「ブ」で三冊ほど買い、「ギンレイ」だ。どうしても「潜水服は蝶の夢を見る」は見たかったんだ。左目と脳の機能以外すべてを奪われた、「ELLE」誌の編集長ドミニクが、まぶたの開閉で文字を伝え、自伝を書き上げてしまうという実話にもとづく映画。元気なころの回想シーンもあるが、ほとんどは、まぶたというレンズを通した世界、それに身体をまったく動かせない主人公という、映画的制約を背負いながら、その制約を逆手にとり、通常ではありえない接近した絵と、夢の世界をおりまぜ、なんともファンタスティックな映像を作り上げてしまった。監督はジュリアン・シュナーベル。祝福すべき映画を作った。インサートされる氷河が崩落するシーン(ラストで逆回し)と、そこに重なる音楽もいい。バッハとロックと、古いシャンソンなど、全体に音楽の使い方もよかった。
なんだか、自分も見ながら、身体の機能が奪われていく錯覚を覚え、何度か身体の位置を動かしたり、手を動かしたりした。
すっかり堪能し荻窪へ。「ささま」だ。店内の海外文学の棚で、篠田一士編『20世紀評論集 批評のよろこび』集英社を525円で買う。これは、かつて河出から出た世界文学全集のうちの『現代評論集』を単行本化したもの。平野甲賀の装丁が懐かしい。
この日はさらに、荻窪の路地を入った幽霊ビルのカラオケボックスと古本女子たちで4時間、カラオケ大会。なんとまあ元気な51歳。これも『新・文學入門』パワーのおかげ。つまり石原剛一郎さんのパワーのおすそわけだ。