雷、どしゃぶり、コクテイルそして追加

okatake2008-06-10

工作舎の石原さんは、かねがね、本の刊行はお祭りだ、と言っている。いま、一日220点の新刊が出版される、と言われる出版洪水のなか、砂の一粒として流されぬよう、できるかぎりのことはしたい。
『新・文學入門』フェアの全貌が決まりつつある。6月は関西、7月は東京。東京では、7月5日に三省堂神保町本店で山本善行とのサイン&トークがある。
くわしくは、以下をクリック(で、だいじょうぶかな)。

http://www.books-sanseido.co.jp/blog/jinbocho/2008/06/75.html

その夜、7時から高円寺コクテイルで、また二人でトークをやります。おんなじことは喋らず、何かしら趣向をこらすつもりです。コクテイルでは、なんとか山本に歌をうたわせようと、思っています。古本ソムリエの歌を聞きたい人はどうぞ。本邦初公開であります。

本日、文化放送に出向き、「浜美枝のいつかあなたと」の収録をしてきました。『女子の古本屋』を中心に古本の話です。放送は6月29日(日)の午前10時半から。ありゃ、米子で「読書の腕前」イベントのある日だよ。
担当の放送作家のMくん、「ちくま」連載から読んでくれていたという古本者で、なんと、古物業の鑑札も取得したという。すげえ。
帰り、増上寺の境内を横断、「芝浜」に出て来る鐘を見て、東京タワーを見上げ、赤羽橋から都営大江戸線で「東中野」経由、中央線で帰宅。東中野では「ブ」を覗く。ここ、105円はしょぼいけど、品揃えがすごいのな。見ていて飽きない。「天満人(てんまびと)」という雑誌を見つけ、創刊号と2号を買う。各750円。値段はきっちりついている。これ、ぼくが幼少期を送った天満周辺の地域雑誌。こんな雑誌を、東京で拝めるとは。

秋葉原無差別連続殺傷事件、続報。なんともやりきれない気持になる。人間がどこまで愚かになれるか、という挑戦のような。そんな悪辣を戒めるように、昨日、大きな雷が鳴り響き、血を洗い流すようにどしゃぶりの雨が降る。おかげで中央線、また止まる。
9日夜はどうしてもコクテイル長嶋康郎さんと角田光代さんの「恋話」トークを聞きたかったので、目覚ましをかけ、早起きをし、夕方まで一気に突っ走る。
毎日「あった、あった。」は、昭和33年明星付録「人生読本 性の神秘」。遅れていた彷書月刊連載は、吉祥寺「さんかく」。集英社新書HP連載「漱石の坂、ハルキの坂」(仮題)の一回目、約12枚。学研新書の送稿。とこれだけを、息を止めて、50メートルプールを泳ぐようにこなす。やっぱ水着はスピード社か。
家を出る時には、空に青さがあり、空気は不穏だが、まあなんとかなると傘を持たずに中央線へ。ちょうど座った席が端っこで、見ると、てすりにビニール傘がひっかかっている。降りる人は誰も取ろうとしない。あ、わすれものだな。車窓を雨が叩き始め、ちょうどよかった。この傘をもらって「ささま」へ寄るため荻窪を降りたら、どしゃぶりだ。
「ささま」ではマキノ雅弘自伝『映画渡世 地の巻』(平凡社)を105円。ピカイチの自伝。電車で読み始めたらとまらない。マキノ監督夫人だった轟夕起子に、共演者の上原謙が手を出す。それを聞いた、長谷川一夫の顔を斬りつけムショへ入り、出て来た増田三郎が怒り、上原謙に飛びかかる。あわててマキノが止める、なんて修羅場のシーン。映画よりおもしろい。
次郎長三国志」の女郎役に、宝塚のトップスターだった越路吹雪を起用しようとすると、撮影所長が宝塚は処女、もってのほかと怒る。そこでマキノは当人に聞く。「あんた、宝塚出やけど、処女か」。越路は「笑わせないでよ、先生。この年まで処女でいられますか」。「近頃は宝塚の女生徒の方がだらしないくらいよ」という。なんでもあり、の世界だ。
夜、コクテイル。角田さんは「クロワッサン」でダイエット体験が掲載されていたが、ほんと、シルエットがすっきりして、きれいになっていた。長嶋康郎さんは古道具「ニコニコ堂」店主にして、長嶋有さんのお父さん。とっつきにくい、気難しい人かと思ったら、軽快によく喋る方だった。しかも角田さんの暴走気味の「パートナーがいても恋がしたい」論に、絶妙の突っ込みを入れながら、自分の恋愛体験をちゃっかり折り込んで、堂々の進行。おどろいた。下着についての、細かい考察は、長嶋有さんのお父さんだなあ、と感心させられた。さすが、並みの親子ではない。
また、角田さんが言葉を選びながら、自分が本当に言いたいことを、詰め将棋のように追いつめていくあたりに「作家」を感じる。
角田さんプロデュースで、長嶋康郎さんVS女性作家「恋話」という企画あり。川上弘美さんまでかつぎ出すと言っていたが、本当かねえ。ひさしぶりに角田さんの顔を見れてよかった。『古本道場』ポプラ文庫、売れてくれるといいのだが。
帰りの中央線、押し寿司のような車内。えらいことになっていました。