古本屋「なさけ堂」とは?

okatake2008-05-13

また7時起き。古本屋の夢を見る。というより、古本市。徳光和夫の息子(アナウンサー)にインタビューされそうになる。紙ものの面白いのが大量に出ていて、シールの屋号をみると「なさけ堂」とある。「なさけない」のか、「なさけをかける」のか、どっちだ。というところで目がさめた。昨日は古本を買わなかったから、こういう夢を見るのだ。
昨晩、国立駅前でポプラ社のKさんに、『古本道場』再校ゲラを手渡す。中央線は人身事故でまた遅れていた。駅前のめちゃくちゃ寒いベンチで、十川信介『近代日本文学案内』岩波文庫をおもしろく読む。これは日本近代文学を、立身出世、他界と異界(幻想)、移動(交通手段)というテーマで読み直す試み。小説が婦女子の玩物と蔑まれた時代から、近代文学として認知される。そして「恋愛」の観念が定着する。いずれも明治20年代のこと。明治20年代に何かがある。
しかし、タイトルがあんまり素っ気なくてもったいない。せめて『近代文学旅行記』とか、手に取らせる工夫が欲しい。これじゃあ、もったいないよ。
ポプラ社Kさんと、居酒屋で少し飲みながら喋る。企画にあれこれ頭を悩ませているようで、「アイデアは古本屋の棚にある」と、古本道場師範らしいアドバイスをしておく。また、向井くんたちの集まりに、遊びにおいで。Kさんが作った、佐藤雅彦編『教科書に載った小説』ポプラ社をもらう。これは佐藤雅彦が、いま使われている中高の国語教科書を読んで面白かった小説を、一部、注や挿絵をそのままに、教科書っぽい版面で生かしたアンソロジー。いきなり三浦哲郎『とんかつ』から、永井龍男『出口入口』と続き、広津和郎菊池寛、古今著聞集、リヒターなど、ちょっといまどきでないラインナップが続く。ぼくも国語の教科書は大好きだった。
角田光代岡崎武志『古本道場』ポプラ文庫は、6月5日発売。いちおう、共著だからね。ぼくのこともよろしく。都内某書店で元本が売られた時、これが文芸書の売り上げベストテンか何かに入ったとき、それを掲示するのに、ぼくの名前ははずされちゃったんだ。気持はわかるけどね。ぼくにだって気持はあるんだから。
Kさんと別れ、ジャズバー「韻」でバーボンを3杯飲む。オスカー・ピーターソン酒とバラの日々」がかかってらあ。常連さんたちの話に耳を傾け、こうしてみんな憂さを吐き散らして、また一週間を生きていくんだ、と知る。
朝日新聞に「蟹工船 はまる若者」と題し、いま、小林多喜二蟹工船』がバカ売れしていることを伝える。格差社会におけるプロレタリア文学復権か、とはならないだろうけどね。中野重治佐多稲子まで読み出せば、本物だ。
なんだか、眠たくなってきた。
いま魚雷くんの「文壇高円寺」で知ったけど、丸善丸の内店で、扉野良人くんの『ボマルツォのどんぐり』が平積みされているほか、「sumus」メンバーの著作が固めて面陳してあるらしい。これは、ぜひ目撃しにいこう。