なぜかホームズ、「樽」、そして「踊る男」

okatake2008-05-06

いま、ようやく「彷書月刊」連載の、下北沢「ほん吉」の分を書き上げる。珍しくてこずったのは、女性古書店主の話題なもんで、『女子の古本屋』の執筆モードに入り、あれこれ、書き過ぎた。あわてて整理して削る。しかし、「ほん吉」はいい店ですよ。「ビビビ」も小粒ながら、身がしまっていて、楽しいし、遠くない将来、再開発で消えてしまう可能性の高い、この両店へエールを送るために、これからは、なるべく下北沢へ足を運ぼうと思う。「ドラマ」も新古書店ながら、品揃えはいいし、下北沢は古本町としても優良です。わたしが保証します。書いているうちに、また行きたくなったぐらい。
今朝は、TBSの放送原稿、大山眞人『団地が死んでいく』平凡社新書、について書く。
その合間に、コナン・ドイルシャーロック・ホームズの冒険新潮文庫、などを持ち出して読んだのは、昨日、千駄木で「旭堂南湖のふるほん講談」で、ドイルの「赤髪組合」を日本に舞台を置き換え、翻案したのを講談に仕立てたのを聞いた影響なり。「例の世事に無頓着な気質から、どんな形式での社交をも嫌悪して、独りベーカー街の古巣にふみとどまって古本のなかに埋まり」うんぬんと、ホームズの描写を読むとき、なんだか、他人のように思えぬのだった。ねえ、ワトソンくん。
あ、「彷書月刊」ではそこまで書けなかったけど、「ほん吉」でクロフツ『樽』を買ったのは、ちょうど電車のなかで、堀江敏幸『河岸忘日抄』を読んでいて、『樽』が印象的なかたちで登場してくるのだった。それで、「ほん吉」の文庫棚で目に入ったもので買ってしまった。これ、買いたくなるよ。
「ブ」の連休セールにはあまり熱心でなかったが、今日、ぶらりと立川栄へ。午前中、文庫と新書200円セール。めぼしいところは、あらかた荒らされている。新書から森まゆみ『『婦人公論』にみる昭和文芸史』中公新書ラクレ、文庫から大江健三郎『「話して考える」と「書いて考える」』集英社文庫パトリシア・ハイスミス『11の物語』ハヤカワ文庫を買う。ほか、105円棚からも少し。大江の文庫は講演筆記。中野重治「踊る男」への言及から始まる。これ、戦後まもなくのすし詰満員電車を、じつにリアルかつ、ユーモラス(悲劇を含む)に描いた傑作。