蝶の館から「細雪」の姉妹まで

okatake2008-05-04

昨日、無事、一箱古本市後半への出店を終える。あいにくの雨だ。天気予報では午前中には止み、午後は回復といっていたが、回復し青空が見え始めたのはもう終わる一時間前ぐらい。うちは妻と娘とで参戦。場所は「ファーブル昆虫館」。奥本大三郎さんのコレクションをもとに、さまざまな昆虫標本と、ファーブルに関するものが展示されている。これが入館無料とは、どうなっているのか。虫好きの子供たちが、親に連れられて、この日もたくさん訪れていた。これが、なんともいい光景。職員の方も、みんな絵本に出てくるようなおっとりした、もの静かな人たち。この雰囲気に酔い、昆虫標本を一つ買いました。マイミクのKyoさんから、武藤康史「短歌往来」連載の「安藤美保の日記」ほかを切り抜きコピーして閉じた「水夢抄」をいただく。
午後、岡崎武志賞審査のため、47店全店を回る。ファーブル昆虫館は不忍ブックストリートの東端で、西端の「オヨヨ書林」まで巡るとけっこうな距離だ。途中、寝不足でふらふらしながら路地を坂を巡る。あちこちで「あ、岡崎さん」と声をかけられ、一年に一度、なんだか有名人になった気分。オヨヨのブースでは、書肆紅屋さんから、2日「東京新聞」夕刊「大波小波」に『女子の古本屋』が取り上げられていた、と教えられる。さっそく、図書館にコピーを取りにいこう。
途中、すごい行列を作っている店を見つけて、ナンダロウと思ったらタイヤキ屋だった。そこより安い値段で、タイヤキ屋はほかにいくつもあったが、並んでいるのはここだけ。タイヤキの美味いと不味いの差は僅差ではないのか。それならぼくはすっと買える方で買う。
そんなことはどうでもいいんだ。あちこち歩いて、ふらふらになったが、おかげで、何度も来ながら、訪れてことがなかったエリアも歩いた。団子坂の東、映画保存館、旧安田邸なんて、こんなことがなければ行けなかった。映画保存館は公園の奥に、江戸川乱歩の小説に出てきそうな古びた蔵があり、そのなかでコチドリ、YomYom、野宿野郎などが出店。照明も薄暗く、こんなところで古本を売るというのがイメージぴったりだ。ここから旧安田邸へは、一度団子坂へ戻ったほうが迷わなくていい、と教えられたが、方角だけ決めて、路地をくねくねと曲がっていったら、途中、光太郎と千恵子の家跡を見つけ、うまい具合に、旧安田邸のある道へ出る。これもまた楽し。
そんなわけで、3時間ほど不在だったため、たぶんわざわざ「岡崎武志堂」を訪ねながら、お目にかかれなかった人もいると思う。ごめんなさい。
撤収が終り、売れ残った本を宅急便で送り(完売神話が崩れ、屈辱!)、打ち上げには参加しない妻子と別れ、一人、団子坂「乱歩」の先の銭湯「朝日湯」に入る。手ぶらセット100円には、タオルとシャンプー、せっけんがついている。第一回目の一箱の時も、谷中の銭湯に入ったのだった。これがなんともいい気分。
ふれあい館の打ち上げ会場で、精算した売り上げ、册数のトップ3の発表、各章発表が行われる。売り上げ総額は、うちは2位。1位は「あずき・きんとき」さん。店主のお一人は、学習院での古本講座の生徒Oさん。教え子に抜かれ、悔しい。
岡崎がこの日、一番おもしろかったのは「野宿野郎」さん、だったが、和服姿の美しいお二人による「Tef Tef」さんに「岡崎賞」を。例によって、手書き看板と、Yonda?の漱石腕時計をプレゼント。Tef Tefさんとは、このあと打ち上げ宴会でも、お近くに座るが、あまりに神々しく、ろくに口もきけなかった。現代に生きる「細雪」の雪子と妙子を見るようであった。その隣りにドイツ人助っ人のナントカくん(ハンサム)。その頭上には大画面で、インドの映画の名場面(?)が極彩色で流れる。この世のものとは思えない光景だった。
楽しい一日でした。実行委員と助っ人さんの尽力には、いつも敬服しっぱなしだ。ありがとう!
あ、ぼくが買った本、ね。ファーブル昆虫館で、職員の方達が臨時の「古本市」を出していて、「10円」箱から、「ユリイカ 戦後日本のジャズ文化」、「たけうま書房」から「ユリイカ はっぴいえんど特集」700円、屋号を忘れたが顔見知りの店主の店から吉田拓郎文庫3冊セット400円を買う。