「月の湯」大盛況

okatake2008-04-06

4月5日(土)、目白の銭湯「月の湯」古本まつり。ここで、坂と文学について喋るため、準備をしないといけない。そのプレッシャーからか、夜中3時に目が覚める。集英社新書書き下ろし用に、ノートを作っていたのだが、それが見当たらない。一から準備しないと、というわけで夜中に、あちこち本を引っ張り出し、メモを取る。1時間喋るためには、原稿に書くと50枚くらいの準備がいるのだ。明け方、少し眠る。
月の湯」へは東西線「早稲田」から早稲田大学をかすめ、胸突坂を上り椿山荘脇を抜けというコースを取る。坂巡りを始めた最初のコースの逆から。
4月ってそうだったか。電車も街も、新しいエネルギーを蓄電した新人を含め、ものすごい人、人、人で、人あたりする。座席で前に座った若者、花粉症らしく、ハナをかんでは、そのティッシュを足元に無造作に投げ捨てる。二度目に、足を蹴って、「おい、なにしとるんや、拾え!」と声を荒げてしまう。若者は意外に素直に頭を下げ、拾った。なんだか気まずくなり、阿佐ヶ谷で降りてしまう。もう少し、言い方があっただろう、と自分がイヤになる。しばらく、声を荒げた自分に嫌悪し、精神的に収拾がつかなくなる。慣れないことをするもんじゃない。
月の湯」はすごいことになっていた。昔ながらの銭湯に、さっきの中央線みたいに、すしづめで人が押し寄せ、脱衣場、洗い場に置かれた古本を漁っている。向井くんの話では、オープンしたときはこんなものじゃなかった、という。かならずしも業者ばかりというわけではなく、事前の告知、広報活動の成果ならん。朝日新聞に記事が載ったのも大きかった。この日もTBS始め、週刊新潮など取材が入っていた。番台に座らせてもらおうと思ったら、それは禁止、だそうだ。武藤さん曰く「夢は夢で取っておいたほうがいい」。抜群のコメントをもらう。
ぼくがこの日買ったのは、「さすらいの太陽」かるた300円、ドリフターズのトランプ(不揃い)300円、「たのしい二年生」付録漫画「マコちゃんとコロ」(森安なおや作、トキワ荘!)400円、某著名詩人が貴花田宛にサインした俳句雑誌500円。これらはトークのまくらとして、紹介したが、ドリフターズトランプなんて、カトちゃんの「ちょっとだけよ」一枚だけでも300円の値打ち有り、と力説する。なにを力んでるんだ、ぼくは。
トークの中身は、「空想書店書肆紅屋」さんがきれいにまとめてくださっているので、そちらをご覧ください。富士山のペンキ絵をバックに、湯を抜いた(あたりまえだ)浴槽の中に入って、そこに小さな机と椅子を置き、まるで服を着たまま湯に浸かったように客席からは見える、ふうに喋る。なんともシュールな絵だ。声もよく響く。隣りの女湯でもよく聞こえたとあとで報告があった。
この日は、じつにいろんな人にお目にかかり、未知の読者からも挨拶され、それだけで収穫があった。木村衣有子さんと、初めて言葉を交わしたのもうれしかった。ぼく、木村さんの大ファンですから。
夜、阿鼻叫喚の大宴会が待っているのはわかっていたが、人あたりと、トークの疲れで、絞りきった雑巾のようになり失礼する。いただいたギャラの中に、「ブ」立川砂川店の50円割引券が12枚も入っていた。こっちのほうがうれしかったりして。娘と山分けし、夕食後、さっそく「ブ」立川砂川店へ。ビデオ「ジャッカルの日」を350円で買う。この夜はもうなんにもする気が起きず、「ジャッカルの日」を見る。3度目くらいか。よくできてるなあ。さすが、フレッド・ジンネマン。ディテールはほとんど忘れていた。