やっぱり振り向いてしまう

okatake2008-02-22

ずっと快晴の日が続く。日が次第に強く、ぬくもりを持ってくるのがわかる。切手を買いに、夕方自転車を走らせたら、近くの雑木林の空き地に、こんもりと陽がたまって、明るく輝いていた。風はまだ冷たいが。風の「暦の上では」を口ずさむ。

君が涙ぽつんと落とした日 町では
もう春のセーターが店先に並んでた
町はまだ冬の名残り 風はつめたい
君が窓開けて僕を呼べば やっぱり振り向いてしまう
君の涙が雪に変わって 僕の肩に落ちた

この「やっぱり振り向いてしまう」という一行がいいですねえ。ふつうなら、君が呼んだから、振り向くと云々となるところですがね。これが「詩心」というものですね。これがあるから、あとの「涙が雪に変わって」という陳腐な心象風景がどうにかかたちとして成立するのだ。

ブックマーク・ナゴヤからリーフレットが届き、いよいよ後半戦、ぼくが出店している一箱古本市の追加補充のため、手近なところから本を抜き出すがとうてい足りない。車を出して、数軒「ブ」の買い出しに。あれこれ買う。田中光二『オリンポスの黄昏』集英社文庫を見つけたとき、すぐにピンときて抜き出したらそうだった。田中は、太宰の弟子で自殺した田中英光の息子。これはその親と自分の関係を描いた私小説。題名は「オリンポスの果実」にひっかっけてあるわけだ。湯川豊イワナの夏』ちくま文庫もやっと見つける。この二冊は自分用。角川文庫の『吉田拓郎詩集』も珍しいところ。こいつはナゴヤに出しちまおう。東大和「ブ」にまで遠征するが、柳原良平『船旅を楽しむ本』(講談社現代新書)があったので、今日はまだ、この畑に鍬が入っていないことがわかる。しかし、ここも枯れてしまって、もうほとんど拾えない。といいながら、評論社のロアルド・ダールコレクション3冊を含め、6冊買う。あれこれ詰め込んで、値段票をつけ、納品書を書き、一箱宅急便で送る。
夜、上々堂へ補充と精算に。売り上げ低迷。売れるのは文庫ばかりなり。銭湯の古本市と、春の一箱で、どばっとこれら在庫を放出して、ちょっと入れ替える必要がありそう。
今月号の「本の話」では、なべおさみ・やかん親子の対談で、なべおさみの芸名の名付け親が勝新、と知ったり、文藝春秋の近刊情報に目をひくものがたくさんあった。
中原昌也『映画の頭脳破壊』は映画についての対談集。ひさしぶりに、なんか、メンツの揃った対談集。
週刊文春編『フォークソング されどわれらが日々』は、「あの頃」と「今」を熱く語る。
寺尾紗穂、という人は初めて知ったが、「QJ」ほかで「向田邦子の再来」と注目されるエッセイストで、シンガーソングライター。なんでも、シュガーベイブのベーシストの娘らしい。東大大学院の修士論文を元に書いたのが新書になり、それが『評伝 川島芳子』。川上未映子という異業種からの乱入もしかり、文化系女子の世界、どうもなんだか、とってもよさそうだ。
双葉十三郎『ぼくの特急二十世紀 大正昭和娯楽文化少史』は、ずっと文春新書で続いている語りおろしシリーズで、今回は映画を離れて、新劇から笑芸、ミュージカルと話題が広がる。これはおもしろいに決まってます。ぼくもかつて双葉さんに「本の話」でインタビューさせてもらったが、あのカラオケボックスで、たぶん作られた本だろう。森史郎『松本清張への召集令状』も文春新書。
浅草キッド 水道橋博士『本業』は文春文庫。タレント本だけの書評集、というのがいいねえ。
ぼくは週刊文春の新年号やゴールデンウィーク号を買い、和田誠表紙(折りたたみ式ワイド)を保存し、ノートのカバーにつけている。ね、ちょっといいでしょう。