エリック・ロメール「獅子座」

okatake2008-01-29

CSのシネフィル・イマジカで、エリック・ロメール特集が始まった。これは楽しみ。
ほとんど未見の初期作品がバンバン放映される。
昨晩は、監督第一作「獅子座」を見る。ぼくはおもしろかった。何をして食ってるかよくわからない(音楽家)ピエールに、伯母の遺産が転がり込む。それで借金までして仲間とどんちゃん騒ぎをするが、あとで間違いだったとわかる(ちょいと「芝浜」みたい)。無一文になって、パリの町をただひたすらほっつき歩く主人公が、どんどん薄汚れて、みじめになっていくのを延々とカメラが追う。当然ながら、このとき観客は、カメラの目で、1959年のパリを観光客のように拝むことになるわけです。ポン・ヌフやカフェ・ドゥ・マゴなどが映ります。
ゴダールが、レコードのおんなじところを何度もかけ直す男の役で出演。興行的には失敗、とありましたが、まあそうでしょうね。しかし、たぶんこれは笑いながら見る映画でもあるんでしょう。文無しで町をうろつく浮浪者、という点ではチャップリンを想起させますし、事実、ピエールのどた靴の先が壊れ、ぱくぱくになる。落ちてる紐で縛ったり、もう最悪。ここらが笑いどころでしょう。
タイトルの「獅子座」は、ピエールが星占いに凝っていて、彼の星(8月2日生まれ)は幸運に恵まれると、卦に出ていたというシーンがあるから。しかし、その誕生日は、最悪の状態になる。あれほど友人に取り囲まれながら、なぜ援助を受けないのか、と疑問がわきますが(事実、彼は知り合いを訪ね歩く)、これはバカンスというものがあり、みな夏はパリから出払ってしまうからです。そこいらも、我々の感覚とはちょっと違う。
パリへ行きたくなりました。
「ぐるり」が届きました。巻頭インタビューは友部正人渋谷毅のソロピアノCDが一度に2枚出たみたい。狩野くんの連載は、ここで一旦終わり、次回から新しい展開があるようです。離婚にも触れていて、駆け足ながら、今回、甘く苦い文章でした。