荒涼たる冬景色を見ながら土浦へ

okatake2008-01-20

ときどき編集者の方が、ここ、読んでるので、それで書けなかった。19日は神楽坂へ、読書アドバーザーのためのセミナーで、100人ぐらいのヒトを前に1時間強喋る。みんな、北海道から沖縄から東京に来て、泊まりがけで「読書」について勉強していくのだ。その熱心さに驚く。この日は、永江朗さん、八木書店社長の八木壮一さん、昭和女子大大串夏身さんとご一緒。ぼくは「古本と読書」みたいなテーマ。手慣れた話をパッチワークして話す。ひさしぶりに『ミコのカロリーブック』で笑いを取る。不変、不朽のネタなり。多くの人が、いいタイミングで随所で笑ってくれているのに、数名、しらけた顔のヒトがいて、たぶんまじめな人なんだろう。(もっと、アカデミックな話が聞けると思ったら、漫才師みたい。バカじゃない)と冷たい視線を感じる。そこで、そこを狙いうちにして、いくつかのネタをぶつける。一人、若い女性が、クスリと笑う。よし、撃沈した、と満足。我ながらバカなり。ちなみに、笑わせたのは田中康夫『なんとなくクリスタル』。
この日、土曜日ながら、神楽坂は観光と散策する人でいっぱい。神楽坂人気を実感する。帰り、西荻音羽館」で、広瀬くんと喋る。「よみた屋」の女性店員が独立して下北沢で古本屋を始める、とか、いくつか古本情報を。あとで、ちょうどお客さんから買ってきたという本の山を見せてもらう。趣味のいい本ばかり。「まるで、音羽館のために、これまで集めてくれていたようやなあ」と、言うと、「ほんとう、そうです。いや、ありがたいですねえ」と広瀬くん。これが一人の人間による、日々の古本屋回りの成果の集中だと思うと、興味深い。ミツバチが花を飛び歩いて集めたような「蜂蜜本」だ。
夜、中央公論原稿をやっと書く。島田裕巳『日本の10大新宗教幻冬舎新書を取り上げたのだが、これがなかなか難しかった。いや、本は読みやすいが、料理するのがむずかしい。ひさびさに苦労した原稿なり。教育雑誌連載コラムを一本書いて寝る。
夜に、「潮」編集部から、締め切りの確認があって、そこで書評依頼があったことを思い出す。ひどいねえ。あわてる。
今日は大寒青春18きっぷが一回余っていて、ほんとうは使ってる場合じゃないが、常磐線に乗って、茨城県の土浦まで行ってくる。車中は、「潮」で依頼された、吉永南央『紅雲町ものがたり』文藝春秋を往復で読了。紅雲町は前橋駅近くに実在する町。そこで和雑貨とコーヒー豆を扱う店をきりもりする「草」というおばあさんが主人公。町内で起きる事件の探偵役をつとめ、解決に尽力する。おもしろかった。
土浦には即売会でおなじみの優良店、「れんが堂」さん、「古本ドリーム」さんがある。前から一度、店舗を覗きたかったんだ。こういうとき、青春18はありがたい。亀城公園近くの「あやめ書房」さんは休みだった。この3軒はじゅうぶん歩いて回れる範囲なり。土浦は駅前からほとんど人影もなく、がらんとした町だった。「れんが堂」は、いまや即売会とネット販売が中心らしく、店の半分はファミコンソフト、半分の通路には、即売会用の木箱が積んであり、棚がほとんど見えない。ただし、並んでいる本はみんないいよお。なにか一冊と思い、「季刊フィルム」3号を500円で買う。ついでに土浦の古本屋情報もお聞きする。親切に教えてくださった。
途中、どこかで食事をと思ったが、店はみんな閉まっていた。路地にあった中華料理店へ入ったら、ここはどこからヒトが集まるのか、一杯だった。タンメンを迷わず注文。おいしかった。このあと、「ドリーム」さんへ。店舗も広く、非常に見やすい棚。ジャンルもほぼ全方位。大衆文学や、古い漫画雑誌、児童書なども揃っているので、マニア向け。棚を見てまわるのが楽しかった。安ければ買い集めている、集英社「おもしろ漫画文庫」の『しらゆき姫』が美本だったので、1050円で買う。
帰り「ささま」で、中村メイコ『メイコのお婿さん探し』(昭和29)840円、朝日新聞社編『お茶の間科学事典』(昭和40)315円、安岡章太郎『舌出し天使』(講談社初山滋装幀)105円を買う。『お茶の間』は、カットを真鍋博武井武雄伊坂芳太良などが手がけている。
国立「ブ」で、単行本の村上春樹世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』、ひさびさに『桟橋で読書する女』を拾う。
帰宅し、夕食後、数時間眠る。さて、これから仕事だ。ブラッド・メルドォをまずかけて。石田衣良がどこかで、ブラッド・メルドォが好き、と書いていて、ちょっとがっかりしたのだが、まあいいや。