『乱歩と名古屋』で新宿へ

okatake2007-12-12

昨夜、「野球小僧」の原稿、井上ひさし『野球盲導犬チビの告白』について書く。これで連載は打ち止め。あとは、書き下ろしで、野球小説の紹介を書き継ぐことになる。
今日は、昼前に毎日新聞社へ。電車のなかで、小松史生子『乱歩と名古屋 地方都市モダニズムと探偵小説原風景』風媒社を読んでいたら、めっぽう面白く、中野で東西線に乗り換えるつもりが、降り過ごし新宿まで行ってしまう。
毎日では、書籍編集を契約で手伝っているOさんと昼食。ひさしぶりに長々と喋る。サンミュージックの相沢社長の本を作った人で、その裏話など。いまは、毎日で、香川京子の本を作っている。
サンデーで仕事を終え、荻窪「ささま」、西荻「興居島屋」「音羽館」と回る。荻窪から西荻までは住宅街をぶらぶらと歩く。「コクテイル」ライブの案内をハガキに刷ったのを、各店に置いてもらう。手描きをコピーして50枚くらい。「ささま」では『西條八十童謡集』(講談社)、山田太一『それぞれの秋』などを買う。音羽館では、昭和30年代もの資料として、豊田有恒『日本SFアニメ創世記』(TBSブリタニカ)を500円で。
興居島屋は石丸くんが店番をしていたが、ちょうど主婦らしい女性が本を売りに来ていた。ちゃんと見なかったが、数冊のうち2冊だけに値ががついて500円だった。「500円です」と本を前に石丸くんが言うと、その女性がお金を払いそうになった。あっ、と気がついて、「古本屋さんだから、つい払いそうになっちゃった」。石丸くん、笑いながら「べつにいただいてもいいですけど……」。話は逆だが、あとで聞いたら、よくあること、だそうだ。これは想像力では書けない話で、いい場面に遭遇した。
家に帰ると、恩田陸『いのちのパレード』(実業之日本社)、それに黒岩比佐子さんから新著『編集者 国木田独歩の時代』(角川選書)が届いていた。後者は、黒岩さんがずっと古書展で買っていた、明治のグラフ誌の蓄積から生まれた本。よく調べ、よく踏み込んで緻密に書き上げた跡が、ページをめくるだけで伝わってくる。ちゃらちゃらしたぼくとは大違い。粘り強い仕事で、ただただ敬服する。寿命が縮むような作業だが、これで書き手の黒岩さんの寿命が伸びるのだ。 
青春18きっぷ、と時刻表を買う。今週末、名古屋行きがあるので、それにからめ、鉄道旅をするつもり。

これからサンデー毎日の書評、河合隼雄『泣き虫ハァちゃん』新潮社を書く。
小学館から、西加奈子さんの『きいろいゾウ』文庫化に際して、解説を頼みたい、という依頼を受ける。2年前、単行本が出た時、ぼくが著者インタビューをしたのが、印象に残っていたらしい。うれしい話だ。もちろん引き受ける。
名古屋行きまでにまだいくつか山がある。いや、丘かな。

丘を越えていこうよ
真澄の空はほがらかに晴れて
うれしい心

の気分で行こう。来週は「だいこんの会」、「書肆アクセス」本の打ち上げがある。『書肆アクセスという本屋があった』(右文書院)は増刷になった。めでたい。