言うまいと思えど京の旨さかな

西行きについて、思い出したこといくつか。9日、出発前、竹橋下車。国立近代で、ブレッソン展を見る。ほぼ10時オープンぐらいに入ったが、けっこう人がいる。これだけまとまった量のブレッソンを見たのは初めてで、興奮する。幾何学的構図がばっちり決まっているのは、ちょっと不思議なほど。
今回はけっこうお土産を買った。大阪では、阿倍野区天王寺町、阪堺電車「松虫」から歩いてすぐの「はやし製菓本舗」の「浪花ことばせんべい」を。『大阪はてな帖』で知ったんだが、手焼きせんべいに「かんにん」「いとはん」「きずかいない」など大阪弁が入っている。店の雰囲気も主人も最高で、これはわざわざ行く価値あり。
京都では林万昌堂の甘栗。これは、山本がうちに来るとき、いつも娘にお土産として持ってきてくれ、大人気の甘栗。ぼくも毎回、買って帰る。
下鴨では、どこだったか、猫の焼物をたくさん売っていて、猫好きの妻に、猫のぐい呑みと、猫のはしおきを。
京都駅では、ホーライの肉マンとシューマイ。手塚治虫ミュージアムの出店で、アトムのカップと、アトムの絵の入ったゴーフル缶を。
京都では、お好み焼きを二回食べたが、どっちも旨かったなあ。関西へ帰ると、毎日、お好み焼きが食べたくなる。どんな店でも旨い。コーヒーも旨いし、言うまいと思えど京の旨さかな。
すむーすの集まりで、参加者による、買った古本の披露があったが、古書キリコの元店員の樋口さんが、三条「ブ」で拾ったという、小林信彦・文/小林泰彦・絵の絵本には度胆を抜かれる。存在さえ知らなかった。参加者から一斉に感嘆の声が上がったのも当然だろう。聖智文庫さんが「○万円はつきます」と太鼓判。このあと、次々と披露された本も、この樋口さんの小林絵本の光源が強すぎて、影さえできない。玉砕だ。
ぼくも帰り、京都駅へ向う途中、三条「ブ」へ立寄る。文庫コーナーで、谷内六郎展覧会と、後藤明生『夢かたり』を見つけ、さすがの山本も、ここ何日か立寄っていないことがわかる。
あと、京都で、噂の古書カフェ「黒猫堂」へ山本と行く。アスタルテからすぐ、ビルの狭い階段を上がっていく。小ぶりの明るい店で、カウンターと奥の壁に本棚。店主の高橋由美子さんは、この階段から酔って転がり落ち、腕を骨折したとかで、三角巾で吊っている。山本と、若い女性を前に、すぐデレデレとなり、せっかくいい雰囲気をオヤジ空気で汚す。高橋さん、なんと密偵おまささんの知り合いだという。おまささんの知り合いって、あちこちにいるのな。「密偵」というぐらいだから、本当に秘密結社でも作っているのかしらん。

留守中に、朱川湊人『いっぺんさん』実業之日本社沼田まほかる『猫鳴り』双葉社神田茜『フェロモン』ポプラ社、ギョーム・ロリス/ジャン・ド・マン 篠田勝英訳『薔薇物語』(上下)ちくま文庫、等をいただきました。ありがとうございました。
また、関西のことは思い出したら書きます。

いま「ナンダロウ」くんの日記を読んだら、京都の食い物屋でひどい目にあったことが書いてある。ナンダロウくん、京都へ行ったらお好み焼きだよ。
あ、そうそう。扉野くんから聞いた話。扉野くんが、袈裟を着て近くのおいしいとんかつ屋で食べてたら、あの高倉健がいたという。健さんがとんかつ。それで、少し離れたところに置いてあったソースに、健さんが手を伸ばそうとしたので、扉野くんが、さっとそれを取って、健さんに手渡した。すると健さんはすっと立ち上がり、「俳優の高倉健です。ご仏門の方にお世話かけて恐縮です」と直立不動のまま頭を下げたという。さすがは、高倉健。あ、「それで、少し」以下はウソです。