枚数の魔、あるいは間について

締切をすっかり失念していた「北海道新聞」のエッセイ、『読書の腕前』について、4・5枚書く。「日経EW」書評には、『伊丹十三の映画』(新潮社)を。女性管理職が読む雑誌なので、それを意識した書き方を、と思い、カンヌのグランプリを取った河瀬直美監督が女性であることから、監督という仕事について、と持っていこうと書き出したら、こっちは600字ぐらいなのでまるで書けない。削って、削って、なんとか押し込む。
読書アドバイザーのテキストの原稿は、気がついたら締切から遅れに遅れ、というのも、20枚から30枚という枚数で、『大菩薩峠』を書く気分。ぎりぎりのところで、土日かけて、長距離に挑む。終ったら、頭のなかが空っぽという感じだった。
この枚数の違いに対応する、というのが、これだけ原稿を書いてきても、なかなかうまくいかない。今日はこれから、週刊ダイヤモンドの文庫コラムを書くが、これまた3冊を400字2枚強に収めるという離れ業。
昼食後、車で砂川「ブ」へ。ヒッチコックDVDを2枚(『第3逃亡者』『山羊座のもとに』)、それにジョン・フォードの神がかり的名作『わが谷は緑なりき』DVD、ジャズのボーカルCD3枚(ヘレン・メリル、クリス・コナー)を買う。本もマンガ含め7冊ほど。これで3000円ぐらいだから安いよなあ。
荷物を車に放り込んで、玉川上水べりを40分ほど歩く。新緑が土の道にまだらの光と影をつけて、風が涼しく通り抜けていい気持ち。しかし、その玉川上水べりにも、このところ、住宅やマンションが建ち並び始めている。
『第3逃亡者』は、間違えられた男、メガネという小道具、敵対する女性を味方につけての車での逃避行、無人の廃屋もしくは人里離れた別荘や小屋、断崖の危機、映画館やコンサートなど群集のなかのサスペンスなど、ヒッチコック的意匠にちりばめられた快作。娘が失意のままベッドで眠っていると、窓から、男が忍びこんできて、なんてあたりは、騎士道物語かシェークスピアか、って古典的な名場面のパロディを見ているようなり。