ついに出た! 『ブンブン堂のグレちゃん』礼讃

彷書月刊に連載されていた、しかも「好評」連載のグレゴリ青山さんの『ブンブン堂のグレちゃん』がとうとう単行本に! それが届いた。イースト・プレス発行。1100円本体、は安いなあ。飢えた獣が獲物に飛びかかってかじりつくように読んだ。
もう、大満足。連載中にも喜んで読んでいたが、一冊で一気読みすると、どんどん加藤京文堂さん(をモデルにした)店主のキャラクターが増幅、暴走していく。周囲の古書店主ならびにバイトの人物の濃さも、じつにイヤミなく、チャーミングに捉えている。グレゴリさんの絵はいっけん雑に見えるが、人物描写においてじつに正確な線であることがわかる。単行本にはそのほか、書下ろしで、梅田、天三界隈の古本屋も店主中心にルポされている。矢野兄弟(そっくり!)も、天牛の平さん、ハナ書房さんも登場。これはなんともじつに、お買得な一冊なのでありました。たまらず古本屋へ駆けつけたくなる本でもあります。いや、すごいよ、ほんと。
以下は、教育誌に書いたコラムから一部抜粋してアレンジ。
金沢で自営出版社を営む龜鳴屋が、このたび、その伊藤茂次という名もなき詩人の詩をほぼ網羅した詩集を出した。タイトルは『ないしょ』。川本三郎さんが解説を書いていて、川本さんが送ってくださった。限定三百数十部。しかし、滝田ゆうのイラストを表紙と扉にあしらった、文庫判のハンディな造本は、いかにもこの貧乏詩人にふさわしい。
大正生れの彼は、電車の車掌、旅回わりの役者、京都へ来て映画の大部屋役者、四十を過ぎて印刷会社に務め、そこで詩と出会い、書きはじめる。
 「生活とはすいぶん/大切なことだと/思うのである/もう一度正座/しなおした/のであるが/ふと晴天に/気づき/馬鹿野郎を/どならないで/風に乗っけて/やった/のである」
初期詩編「晴天」の一部だが、言葉遣いは平明ながら、詩の世界をいきなりつかみとっていることがわかるだろう。妻はガンで死に、そのあとアル中で病院を出たり入ったりし、酒では周りにずいぶん迷惑をかけたようだ。最後は部屋でのたれ死んでいた。表題となった「ないしょ」も傑作。山之口貘木山捷平川崎長太郎つげ義春が好きな人はハマること間違いなし。まだまだ野に埋もれた、知るべき人がたくさんいることが改めてわかった。

てな、わけで昨日は一日中、原稿を書いてました。もちろん、たっぷりのろのろと休憩を取りながら、だけど。山本善行との「対談本」も、二人で新しく日本文学全集を立ち上げるというテーマで、とりあえずリードのラインを引くため、日本文学全集の端本をあちこちから引っ張り出したりして、着々と書きすすめる。そこへ山本が書き込んで、またぼくがという作業。中央公論社から出た『日本の文学』がベスト、と意見が一致。いま入手できるものでは、ちくま日本文学全集がとりあえず究極。これにあと二人で40巻足す、ということにする。佐藤泰志はもちろん入れる。
今日は五反田だが、まだ仕事の積み残しがあり、午後から出陣ということにする。ホロヴィッツショパンなぞ聞きながら、ね。