追分は遅い春

4日(金)昼前、信濃追分駅着。「追分コロニー」斎藤夫妻に出迎えられる。同駅舎内にある、暮しの手帖別冊「あたらさん」編集部を訪ね、那須さんに御挨拶。ちょうどソーラーシステムの調理機で調理中だった。信濃追分駅はふだん無人の小さな駅舎。那須さんに案内してもらい、ホームに作った花壇、そして真正面に浅間山を拝むビューポイントを教えられる。まるで駅を自分の家のようにしている那須さんだった。
追分はいま遅い春の訪れで、桜が咲き、散り始め、潅木には青い眼がいっせいに芽吹きだしている。
4時、この春から本格的オープンした「追分コロニー」の喫茶スペースでトーク。15名も集めてもらったのは、斎藤夫妻の尽力による。お客さんは追分、軽井沢の別荘族で、みなぼくより年上。みなぼくより教養のありそうな人たちで、怖れ、ひさしぶりに緊張する。
この晩は斎藤さんの別荘に宿泊。夜、酒を飲みながら、斎藤さんとギターを交互に弾きながらむかしの歌をうたう。ギターが2台もあるのだ。
5日、6時過ぎに目覚め、窓の外を見たら、林のなかの風景。隣家も離れて建っているため、林のなかにぽつりとある印象。トースト、コーヒー、サラダなどの朝食を、テラスで食べる。しきりに鳥が啼く。「あれはキジ」「あれはゴジュウカラ」などと教えられる。風は少し冷たいが、林の隙間から青空が覗き、なんともいい気分。
広大な敷地を持つ早稲田のセミナーハウス、後藤明生吉野太夫』に登場する遊女吉野太夫の墓などを散歩する。
「追分コロニー」に上品な老女の客が。それが近藤富枝さんだとわかり驚く。近くに別荘をお持ちとか。矢田津世子のことを書いた時使った本がたくさんあるから、どうぞと斎藤夫妻に声をかける。
「追分コロニー」では、記念に、箱入の四角い野尻抱影『星三百六十五夜中央公論社を2000円で買う。
堀辰雄記念館も訪ねたし、すっかり追分の春を満喫する。斎藤夫妻にはすっかりお世話になった。