ラテンアメリカ文学の夜

昨日、1日。夕方、高円寺「西部展」へ。昭和7年に出た北海道の写真集、『北海道の展望』、その装幀と、サッポロ、函館、小樽などの都市の写真に引かれ買う。2415円。島田啓三冒険ダン吉大遠征』の復刻、裸本で420円、『源氏鶏太サラリーマン小説選 1』は、すでに所持している随筆集などが入っているが、これもデザインがいい、315円。あと「カイエ」の映画特集の2を210円で。
阿佐ヶ谷へ。風船舎へひさしぶりに顔を出す。開店して半年以上たっているが、通路に荷物を置かず、棚も荒れていない。若い店主夫婦と少し言葉を交わす。まだ初々しさが残っていて、話していて気持ちがいい。こっちの気持ちも少しリフレッシュする。なんとか長く続けてほしい、と願う。
このあと、青柳いづみこさん邸で、ミニ阿佐ヶ谷会。この日の参加は8名くらい。いつもの半分以下か。それでかえって落ちついて皆さんと話ができた。新参加が、ラテンアメリカ文学野谷文昭さん。阿佐ヶ谷在住だという。この晩はほとんど野谷さんの独演会。サッカーにくわしく、今回のワールドカップ、それにサッカー全般について、どこか雑誌が取材に行ったら、というぐらい独自の意見を持っていらっしゃる。すっかり聞き惚れる。マラドーナのすごさを2点挙げよ、と野谷さんから質問され、みんな考える。答は、ゴール前で競り合っても倒れないこと、それに、ディフェンスの身体半分の隙間から正確なシュートが打てること。まさしくラテンアメリカ文学と同じく、魔術的リアリズムの世界である。
野谷さんは東京外語大の卒で、卒論にラテンアメリカ文学を選んだのだが、そのとき、まだいまのように知られていなくて、指導できる教官もなく、外語大の図書館にも、ラテンアメリカの本は、一冊しかなかった。それも、ビジネスマンが寄付したような、ネイティブインディアンの本。その他、パイオニアとしてずいぶん苦労された話、興味深くうかがう。
家に帰って、「カイエ」79年10月号「ラテンアメリカ文学の現在」、「ユリイカ」83年7月号「ラテン・アメリカの文学」、88年8月号「ガルシア=マルケス」などを引っ張りだしてみると、当然ながら、野谷さんはすべてに関わっている。とくに「ガルシア=マルケス」では、中上健次との対談あり。70年代の終りから80年代、集英社の「世界の文学」や、「海」、それにサンリオSF文庫などで、われわれはラテンアメリカ文学の洗礼を受けたのだ。野谷さんが来ると知っていたら、ちょっと予習していったのだが。
今日2日は、ひたすら小谷野敦谷崎潤一郎伝』を読む。『吾輩は猫』パロディ本のこと確認するため、横田順弥さんの『古本探偵の冒険』を読み始めたら、ついつい全部目を通してしまう。やっぱり、おもしろいや。
今週は、共同通信が二本、彷書月刊サンデー毎日の締めきりあり。それに6日は週刊ブックレビューの録りがあり、その準備もしなくちゃならない。そのほか、いくつかメールで、ああそうだったと……こんなこと書いてもしかたないや。まあ、がんばります。