今年はゆっくりと、春が訪れる

朝、目覚めたら快晴。新聞回収日なので、まとめて十字結束して外へ出す。見上れば、青い色紙を貼付けたような空だ。……今年はゆっくりと、春が訪れる(山崎まさよし
18日、神保町へ。愛書会を覗くが買物はなし。QBで散髪。いつも、「どうしますか」と尋ねられて、こうすると、うまく意志が伝えられず、これはいつもそう。使う言葉のタームが違うのだ。もどかしく、しかも相手は口答えをし、「もういい、金返してくれ、やめる」と言いそうになる。50近くになってこのありさまだ。
東京堂で40数册にサイン、イラストを入れる。『気まぐれ』でひんぱんに似顔絵を描いているので、作家の顔写真をスクラップした写真帳を作る。これは、新潮文庫日記を転用したものなり。川上弘美さん、小川洋子さんに初挑戦、これがうまくいく。うまくいくのは3分の1くらいか。しかし、これだけ描いていると、うまくなってくる。
このあと六本木へ。ABCのトークショーのため。半蔵門線「神保町」から日比谷線「六本木」へは、青山一丁目から都営大江戸線乗り換えになるが、運賃表を見て、うっかり190円で買ってしまう。これ、都営は乗り継ぎできない運賃だよな。大江戸線は乗り継ぎが面倒だし、ええい、と青山一丁目から六本木まで歩く。じつは大してかからないのだ。20分くらいか。
今夜のトークショー「ストライプ・ハウス」は、ABCの出店(?)で、洋書やビジュアル書主体のお洒落な書店。ぼくに似合わんなあ、と思いながら会場へ。30席が満杯。知ってる顔が3分の2ぐらい。河野なんて皆勤賞だ。ラジオ体操のように、カードを作ってハンを押してやらないとな。例によって古本ネタのバカ話でお噂をうかがい、向井くんを迎えてなんとかフィニッシュ。もう、『気まぐれ』は売れないだろうと思ったが、サイン会のとき、けっこう並んでくれた。プレゼントコーナーでは、講師用に用意されたペットボトルについた紙コップまでサインして渡す。これは向井くんのアイデア
打ち上げは六本木の居酒屋。18名でわいわい、がやがやと過ごす。帰宅したら日付けが変わっていた。
19日、名古屋「中日文化センター古本講座」最終日。朝6時起き。朝刊「朝日新聞」読書欄を広げると、『気まぐれ』の書評が載っている。予想していなかったので、おお、と思う。「報道ステーション」 で解説している加藤千洋さんが書いてくれたのだ。これで、新聞では産経、読売、北海道、中日、東京、朝日と書評を含む紹介が掲載されたことになる。
8時30分ののぞみで名古屋入り。早く入ったのは、かねてから、円頓寺商店街へ行きたいと思ってたから。蔵作りの町並みが続く川沿いの街道を歩き、円頓寺商店街へ。人影もない、寂れたたたずまいの商店街。店もほとんどまだ閉まっている。商店街ぐるみデッドストックという感じ。
愛知県図書館へ寄り、調べもの。官庁街を突風にさらされながら栄へ。5回目となる古本講座は、11名の生徒さんたちによる発表会。これがおもしろかった。「サザエさん」研究あり、80年代雑誌蒐集あり、栞の歴史とコレクションあり、プロレス本研究あり、特撮ものから耽美への自分史あり、バラエティに富んでいる。均一で山名文夫『広告のレイアウト』を拾ったり(200円)、「ブ」で葉山嘉樹全集全巻をせしめたり、腕もたしか。これだけいて、みな違う分野の古本話ができるなんて、優秀な生徒さんたちだ。
終わって、打上げで喫茶店で余韻をたしかめあう。5カ月通って、11名の顔も名前もようやく一致したころ、さよならだ。情が移ってしまったようで、別れが寂しい。かつて教師をやっていたせいか、3月はなんとなく、毎年、少し寂しい気持ちになるのだ。